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伝説のスポーツカーをEV化!京大発ベンチャーの躍進

GLM

2013.05.09 UPDATE

グリーンロードモータース

京都大学発のベンチャー企業であるグリーンロードモータースは、伝説のスポーツカー「トミーカイラZZ」をEV化し販売することに成功したことで今話題の企業です。代表取締役社長の小間裕康さんにどのようにして自動車を開発、販売することが出来たのか経緯をおうかがいするとともに、自動車業界におけるEVの可能性についても話して頂きました。

グリーンロードモータース

EVとスポーツカーは相性が良いんです

グリーンロードモータース2013年4月2日から予約を開始したトミーカイラZZ EVモデル。

グリーンロードモータース当時のトミーカイラのデザインチームが新デザインを担当した。

──御社の発足と「トミーカイラZZ」をEV化した経緯をお聞かせ下さい。

小間:実は“EV車を作ろう”というスタンスではなく、最初にあったリソースがEVだったので、それに合った商品としてスポーツカーを選んだ、というのが経緯なんですよ。もとは2006年に京大にて開かれた“京都電気自動車プロジェクト”で、京都の優良部品メーカー各社が電気自動車の効率化を目指し集まったのが始まりです。技術が製品化のレベルまで高まってきたところで、参加していた私が是非これを販売したいと思い、2010年4月に法人化したんですね。設立当初から電気自動車の一番のメリットは発進の加速性にあると考え、相性が良いだろうスポーツカーに的を絞り研究開発してはいました。ですが実はその頃はまだ「トミーカイラZZ」という車のことは知らなかったんです(笑)。

我々は普段コストの削減と製品化の実現に向けたスピード感の向上を図るため、従来の一社で全ての研究開発を行うような垂直統合型ではなく、各社の得意分野を持ち寄って開発する水平分業型のビジネスモデルを採用しています。これによって制御部分の研究開発という主軸以外は各企業のノウハウを応用していたんですが、車体に関しても同様に既存のものを起用しようと考えていました。そうして技術者募集をかけたところ元トミーカイラの技術者が応募に来てくれて、それがEV車としての「トミーカイラZZ」復活のきっかけとなったんですね。

もともとトミーカイラは京都が生んだスポーツカーブランドです。15年前にZZという車を販売しており、日本で唯一206台、つまり100台以上の販売を実証できたベンチャー企業なんですよ。当時のコンセプトが基本的に「安全性部品に関しては大手のものを流用して使おう」という考え方で、正に今で言うオープンソースの考え方でした。そのため設計図や使用部品も公開されており、お客様はご自身で好きなように足回りなどカスタマイズが出来る様な仕組みになっていました。こういったコンセプトも我々の理念に合っていて、この車をEV車として復活させたら面白いんじゃないかという方向に進んでいったんです。

グリーンロードモータースモジュール構造化したプラットフォームで剛性・強度等すべての性能を完結させる合理的構造が“KYOTO生産方式”。

グリーンロードモータースモジュール構造化したプラットフォーム の開発の成功により、エクステリア部分の自由な設計を可能にした。

──独特の“KYOTO生産方式”はどのようにして実現させたのですか。

小間:“KYOTO生産方式”のオリジナルはレーシングカーが用いている方式なんですね。通常、自動車の生産では外装部分も含めて1つの型が製造ラインに乗って組み立てられていくのですが、我々は外装部分については型を必要としない作りにしています。そのため、原理的にはどのような外装デザインも取り付けが可能なんですよ。特許も取得していて、全ての安全性をプラットフォームだけで満足出来るレベルまで高めていますので、公道でも走ることが可能です。少ない部品のみで強度を上げようとすると今度は重くなってしまうため、スポーツカーとしてのメリットが失われるという矛盾があり、これを解決するのにはかなり苦慮しました。トヨタでレクサスのアンダーボディの設計課長をやっていた人間なども技術者募集により参加してくれまして、そうしたことが大きかったと思います。最新の安全思想に基づいて再設計しまして、結果的に非常に軽くて剛性の高いものが完成しました。

こういった技術革新に対し積極的に取り組むことが出来るのがベンチャーの魅力だと考えています。弊社は正社員数で7名の規模でして、他には期間を絞った継続契約でご一緒させて頂いている技術者の方々がいます。彼らにとっても夢のある仕事ですし、自分が一から携わった車が販売されるということにとても魅力を感じていて、現在は非常に良質な技術を持った方たちに参加して頂いています。平均年齢は大体30代の中頃でして、丁度、自動車メーカーでいうと課長クラスの人物になります。この役職から上になってしまうと、大手では現場を離れるため、設計を任せてもらえなくなるんですが、実はこの年齢層の方は手が動く技術者としては最も脂の乗った時期の方々だと考えています。他にも例えばソニーといったエレクトロニクス系の企業OBの方にも、部品の開発スパンに対して対価を支払う様な形で参加してもらっています。電気自動車という視点で考えた場合、どちらかというとバッテリーやECUの技術を持った方が必要な場合が多いです。そのため、一概に自動車業界の出身者のみで構成出来るというわけでもないんですね。

グリーンロードモータース

“EVだから売れる”のではなく“面白いから売れる”発想が大切

グリーンロードモータース

──ベンチャー企業として求心力を蓄えられた秘訣は何ですか。

小間:我々がもし、今から同じことを始めようとしたら、これほどには人や協力会社が集まらなかったでしょうね。丁度開発をスタートした時期は、大手メーカー各社で方針を転していて、我々のような色のつかないベンチャーと共同開発をすることが出来たタイミングでもありました。

日本はベンチャーを育てる土壌がない、ベンチャーキャピタルが育っていないと言われがちなのですが、実はエンジェルの層は厚いんですよ。ですから志が高いベンチャーに対して資金だけでなくノウハウも一緒に提供していくような環境は整っていると思っています。そういった存在を巻き込む上でもベンチャーにとって必要なのは“コンセプト”だと思っています。我々がもしスポーツカーの開発をしていなかったら、認知もここまでされなかったと思いますし、スポーツカーだからこそ、部品メーカー各社も技術を提供する意味があったんですね。それが消費者にとっても希少性として価値に繋がっていきますので、ビジネス的にも整合性が取れていたと考えています。逆にもし開発していたものが小型車だったら、大手が手掛けるEV車と比べても、我々の特長を出すことが難しかったと思います。スポーツカーは根本的に万人受けする車種ではありませんが、例えば100キロに到達するまでの秒数であったり、注目されるところに集中して開発することが出来ますよね。そういったところがメディア的にも商品価値を伝えやすかったのだと考えています。

グリーンロードモーターステストドライバーとしていま注目のレーシングドライバー白石勇樹と契約している。

──自動車業界においてEVはどのような役割があると感じていますか。

小間:EVは自動車業界において、まだまだ全体の大勢を占めるものではないと考えています。現実的に考えてもガソリン車に比べてコスト的には割高ですよね。一方で、EVならではの走る喜びもあります。ですから、まずは市場に対しターゲットを明確にした供給から始めれば、今後面白いものが生まれてくるのではないでしょうか。つまり“EVだから売れる”のではなく“面白いから売れる”ものを考えることが重要なんです。「トミーカイラZZ」は屋根もないですし、エアコンすらありません。走りもマイルドなものではなく荒々しいものに設定されています。言ってみればレーシングカーそのものなんですよ。しかしそうしたことで軽くて速い車は世界にまだ類を見ないので、とても魅力的な車である、という理解が市場で得られたんです。価格も800万円しますが、これは本来ハンドメイドの部類で考えたらガソリン車に置き換えても1000万円クラスの車種になります。それにメリットを感じて頂ける層がいるということなんです。

──これからの御社の展望を教えて頂けますか。

小間:「トミーカイラZZ」はこれから年内で99台の販売を目標にしていますが、4月2日の仮予約開始当日で既に100件ほど問い合わせを頂き、その中で本契約の話まで希望されたお客様が30名ほどいらっしゃいました。その後も日々相当数の問い合わせを頂いています。年間生産キャパは最大300台までありますが、最初は管理面からも余裕を持たせて生産していく予定です。また2年目以降の目標としては1000台規模を掲げ、ステップアップしていきたいと考えています。

長い目で見た場合、我々としては“スポーツカー”に対する理念を主軸にして事業展開していくことが、マーケットとして最も大きいと考えています。場合によってはEVという殻を破っても構わないと思っています。日本を含めアジアは大量生産車や軽自動車が主流ですので、欧州のようにスポーツカーに特化した専属メーカーがありません。ですからまず京都という世界的にも文化発信が可能な場所で、我々がアジア唯一のピュアスポーツカーカンパニーとして成功することを目標としています。市場規模でみても、フェラーリが年間6000台の販売台数であることを考えれば、その先で我々が世界1位のピュアスポーツカーカンパニーになることも決して夢ではありませんよね。2015年の開発モデルでは新たに「トミーカイラZZII」の発売も検討していますので、是非楽しみにしていて下さい。

今回の取材を振り返って

ベンチャー企業でありながらも多くの企業を巻き込み、成功を収めつつあるグリーンロードモータース。資本力のないベンチャーでも水平分業型のビジネスモデルを用いれば、非常に高いレベルの商品を生み出すことが出来る、と小間社長はおっしゃいます。同時に、定期的に開発を行う環境を維持し、自社商品に魅力を与え続けることが重要なのだとも教えて頂きました。そういった柔軟で合理的な発想と、強力な独自の強みを持っていることが、グリーンロードモータース躍進のカギではないでしょうか。

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グリーンロードモータース

2006年、京都大学発の電気自動車の開発・販売プロジェクトである“京都電気自動車プロジェクト”にて、京都の優良部品メーカー各社が電気自動車の効率化を目指し集結。そのメンバーが2010年4月に法人化。環境対応自動車の早期普及を目的とし、複数の提携企業の協力のもと、ファブレスモデルによる市販車の開発製造を行っている。同社が販売を予定している「トミーカイラZZ」は、2人乗りのオープンカーで、車体は流線形のデザインが特徴。停車状態から3.9秒で時速100キロに到達する加速力に加え、1時間の急速充電で120キロを走行可能というEV車として優秀な性能を発揮、現在は4月2日の仮予約開始から問い合わせが殺到している。

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