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ルイ・ヴィトンともコラボ!初音ミクが主演するボーカロイド・オペラ

東市篤憲

2013.05.16 UPDATE

クリエイティブプロダクション「A4A」東市篤憲

2013年5月、人間不在のかつてない先鋭的なオペラ『THE END』が、東京・Bunkamuraオーチャードホールで幕を開けます。主演は初音ミク。歌手やオーケストラのかわりに、1万ルーメンを超える高解像度プロジェクター7台と10.2チャンネルのサラウンド音響が物語を紡ぐこのプロジェクトに、音楽家・アーティストの渋谷慶一郎、演出家・劇作家の岡田利規、映像作家のYKBX、建築家の重松象平など、気鋭のクリエイターたちが集結。話題を集めている「ボーカロイド・オペラ」はどのように生まれたのか、プロデューサーでA4A代表の東市篤憲さんにお話をうかがいました。

初音ミク

人間のいないオペラを作るなら、初音ミクしかいない

前編フルCGとなる今作は、4面スクリーンを起用し立体感を重視した作りとなっている。

前編フルCGとなる今作は、4面スクリーンを起用し立体感を重視した作りとなっている。前編フルCGとなる今作は、4面スクリーンを起用し立体感を重視した作りとなっている。
撮影:新津保建秀
写真提供:山口情報芸術センター [YCAM]

──この企画が生まれた経緯を教えてください。

東市:もともと本作は、2012年12月に山口情報芸術センター(以下、YCAM)で公演したものです。YCAMの企画として音楽家の渋谷慶一郎さん、劇作家の岡田さんと何かやれないかという話があり、渋谷さんから「人間が出てこないオペラを作りたい」という提案があったんですね。そこから岡田さんと、「ロボットの声を使ってオペラを作ろう。それなら初音ミクしかない。」という話になったんです。

私自身、これまでインスタレーション(※)や体験型コンテンツを多く手がけてきましたが、広告プロモーションとしてのインスタレーションって一過性で終わってしまうことが多い。そこにストーリーがあればもっと楽しいのにと、いつも思っていたんです。それで本作では、岡田利規さんにストーリーを作ってもらい、映像をつけて、今までにない体験型コンテンツを作ることにしました。YCAMで滞在制作などしながら、約1年半かけて制作しました。
※現代美術の手法のひとつ。作品を単体としてではなく、様々な素材を組み合わせて作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術。

映像とキャラクターデザインはYKBSが担当。初音ミクに新たな魅力を与えた。

──「初音ミク」だからできたこととは?

東市:初音ミクはそもそも音声合成ソフトとしてのキャラクターなので、自由に二次創作できるオープンソースなんです。そのため可愛いミクやカッコいいミクなど、人それぞれのミクが存在するんですが、YCAMでやるからには萌え要素はあまり出さず、アートとして打ち出したいと思いました。

そこで気鋭の映像作家であるYKBXに映像とキャラクターデザインを、建築集団OMAニューヨーク代表である建築家の重松象平さんに舞台美術をお願いしました。ミクの衣装も、ルイ・ヴィトンに提案したところ、マーク・ジェイコブスのスタジオが「ぜひやりたい」と言ってくれて。衣装提供してもらうことになりました。

物語のテーマは「死」です。初音ミクって、生きてるのか死んでるのかよくわからない存在じゃないですか。生きてるわけじゃないのに、ライブでファンが「ミク、好きだよー!」と声をかけたりする。それって、不思議な現象だなと感じていて。存存のないものに祈りや思いを込めるところ、また人によって作る形が違うところも、神がかった存在だなと思ったんです。その初音ミクが死ぬとしたら、どういうふうに死ぬのか。それを物語にしたらすごくおもしろいし、悲劇にすることで、伝統的なオペラの構造に落とし込めるなと思ったんです。

──いわゆるオペラや映画とは、まったく違う体験になりそうですね。

東市:構成はいろいろ試行錯誤した結果、4面のスクリーンを使うことにしました。全編70分、フルCGの作品ですが、映画のようにスクリーンを塗りつぶすのではなく、劇場全体を真っ暗にして雲の中にミクを置き浮遊させるなど、立体感を重視した作りにしています。10.2チャンネルの音響も、ミクが右から左に歩くと音も右から左に動くようにプログラムして、映像と連動するようにしています。それから音に関しては、大きさに驚かれる方が多いのですが、これは音量レベルを上げているのでなく、音圧を体感させているんですね。だから長時間聴いていても、耳が痛くならないんです。

人間には、新しいものや、見た事がないものが見たい欲求、つまり、「すごいものを見せてよ!」っていう感情があると思うんです。この公演は、ミクや渋谷さんのファンに留まらず、そういう感性を持つ人に観ていただきたい。そして今までにない、新しい体験を楽しんでもらいたいと思っています。

初音ミク

アートが人や社会と関わり、世界が広がることが大切

YCAMのホワイエという空間で行った『THE END』の展示の写真 。YCAMのホワイエという空間で行った『THE END』の展示。
撮影:丸尾隆一
写真提供:山口情報芸術センター [YCAM]

右は音楽家・アーティストの渋谷慶一郎さん、左は演出家・劇作家の岡田利規さん。右は音楽家・アーティストの渋谷慶一郎さん、左は演出家・劇作家の岡田利規さん。
渋谷慶一郎 Photo : KENSHU SHINTSUBO
岡田利規 Photo : Nobutaka Sato

──プロデュースされる上で苦労されたことは?

東市:みなさんアーティストとして最大限のものを出したいと思うわけですが、それを全部やろうとすると予算が爆発してしまう(笑)。やりたいことをどこまで叶えて、どこまで調整するか。そのバランスを取るのがけっこう大変でしたね。でもこれだけ第一線の人たちが、互いに積み上げてきたものを出し合い、協同で制作する機会ってなかなかないことなんです。それは苦しくもあり、楽しくもあったところです。

今回公演するオーチャードホールは、「東京でやるなら、歴史と伝統のある劇場で」とずっとこだわっていた劇場です。初めは「アキバカルチャーとオーチャードでは、観客層が違うからなかなか公演するのは難しいかもしれない」と言われたんですが、一年かけて口説きました。そして実際にYCAMの公演を見てもらったところ「素晴らしい」と言っていただき、実現することができたんです。

YCAMで初演したときは、東京からたくさんの方やクリエーターが、観に来てくれました。飛行機や新幹線で山口まで足を運ぶって、高いハードルだと思いますが、そこで「おもしろい」と思ってもらえたら、次につながっていく。そんなふうに、地方で作ったものを東京に持ってくるほうが、今の時代の流れに合っているように思います。

11月には、パリのシャトレー劇場での公演も決まっています。ただ、東京もパリもあくまで過程だと思っていて。実は当初から、世界各国で公演できるよう、公演のノウハウを英文で記したテクニカルライダーを作ってあるんですね。パリだけでなく、世界中のいろんな人にみてもらいたいと思っています。

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──A4Aの活動について教えてください。

東市:一般的に制作会社って、映像、WEB、CGなどジャンルが分かれているんですが、その垣根のない会社があってもいいんじゃないかという思いから、2011年に立ち上げました。A4Aとは「Artist for Artist」という意味。クリエイターが活動に専念できる環境をつくるマネージメント会社であり、『THE END』のように、いろいろなアーティストとともに作品を作るプロダクションでもあります。

ものづくりをしたい人はたくさんいますが、僕は作ったものが社会と関わり、世界が広がっていくことが大事だと思っています。日本は欧米に比べ国の支援制度が発展途上でまだまだ行き届いてないなど、アーティストの育成が難しい環境にあります。またお金を集めて、たくさんの人が関わるアートコンテンツを作れる人もまだ少ない。僕はそういう場で、しっかり責任を負えるプロデューサーでありたいと思っています。『THE END』だけでなく、これからはもっと若い才能を発掘したり、新しいことにも挑戦していきたいなと思っています。

初音ミク

「THE END」公演情報

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VOCALOID OPERA「THE END」
5月23日(木) 19 :00開演
5月24日(金) 15:00開演 / 19:00開演
会場:Bunkamuraオーチャードホール
コンセプト:渋谷慶一郎、岡田利規
音楽:渋谷慶一郎
台本:岡田利規、渋谷慶一郎
共同演出:岡田利規、渋谷慶一郎、YKBX
出演:渋谷慶一郎、初音ミク

料金:プラチナ席(プログラム付) 10,000円/S席 7,500円/A席 5,000円/B席 3,000円 税込
※B席のお取扱いはBunkamuraのみとなります。
※プラチナ席をご購入のお客様は、当日プログラム売場にてチケットをご提示の上、お受け取りください。
※未就学児童入場不可
http://theend-official.com/

今回の取材を振り返って

プロデューサーとして数々の映像やインスタレーションを手がけてきた経験を武器に、テクノロジーを使ったアートコンテンツの新たな可能性を探る東市さん。そのひとつの到達点が、ボーカロイドオペラ『THE END』です。オペラと初音ミク。クラシックホールと最新テクノロジー。そして音楽、演劇、映像、建築、ファッションなど各ジャンルで活躍する気鋭クリエイターたち。それらが一堂に会したとき、何が起きるのか? さまざまな「予感」に満ちたプロジェクトの舞台裏にあったのは、「新しいもの」を作るために奔走する作り手の情熱でした。アートと人、アートと社会をつなぎ、新しい世界を見せる。その挑戦に、私たちは胸が高鳴るのかもしれません。

東市篤憲 Atsunori Toshi
ヴィジュアルデザインスタジオWOWを経て、2011年5月、クリエイティブ・プロダクションA4A設立。CGやプログラミングを使った映像制作+デバイス+システム設計をベースにあらゆるデジタルアイディアのイメージを広げ、ゼロから未知なるものを企画し、具現化するクリエイティブ・プロデューサー。デジタル+アートの知識と経験から、大型屋外映像、MV、アニメーション、インタラクティブ・アート、空間演出、インスタレーション、Web、アプリ、プロダクト、アーティストマネジメント+キュレーションなど、ジャンル問わず活躍の幅を広げている。

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