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地方工場が開発!30カ月待ちの魔法のフライパン

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2014.04.10 UPDATE

錦見鋳造株式会社

現在、商品入手まで30カ月待ちと言われる大人気で、メディアでも取り上げられることの多い「魔法のフライパン」。このフライパンを開発したのが三重県にある錦見鋳造株式会社です。元々は鋳物を製造する下請け工場だった会社が、いかにして魔法のフライパンを誕生させたのか、また大ブレイクのきっかけはなんだったのか、代表の錦見泰郎さんにお話をうかがいました。

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業界の常識を覆す!脅威のフライパン誕生

熱効率のよさのおかげで素材の味が活きる 熱効率のよさのおかげで素材の味が活きる

フライパンの断面図。厚さ1.5mmの薄さ フライパンの断面図。厚さ1.5mmの薄さ

──まず最初に「魔法のフライパン」の特徴を教えていただけますか?

錦見:このフライパンが他の商品と大きく異なる点は、厚さ1.5mmという極薄の鉄鋳物で出来たフライパンだということです。鋳物特有である抜群の熱効率の良さと、圧倒的な軽さが特徴ですね。従来、鋳物製品は重くて片手で持つことができないという人も多かったのですが、「魔法のフライパン」は女性でも片手で料理をすることが可能です。

そして、熱効率が良いということは、それだけ素材の味が活きるということなんですよ。同じ鉄鋳物が使われているステーキ皿や、すき焼き鍋、ダッチオーブンなどで食材を焼いたときに、素早く調理できて美味しく感じると思うんですが、このフライパンはそのような製品に比べて、3分の1程度の薄さになりますので、その違いをより感じ取れると思います。

これまでさまざまなメディアでも取り上げられるようになりまして、おかげさまで現在の予約は納品まで約30カ月待ちとなっております。

──御社は元々調理器具メーカーではなかったんですよね?

錦見:そうですね。いわゆる下請け工場として鋳造部品を手掛けていました。しかしバブル崩壊直後に価格破壊の波に飲まれまして、会社存続の危機に直面したんです。それで図書館や公共の資料室に通い詰め、金属に関して改めて独学で学び直しました。そこで辿り着いた答えが「生き残るためには他より技術的に3倍難しいことをやるか、3分の1の価格に設定するか」という2択でした。価格を下げてしまっては従業員や家族を養っていくことはとても難しいです。ですから、当時業界で平均的であった厚さ5mmの常識を覆すべく、1.5mmの鋳造に挑戦することにしました。それでも2mmの壁を打ち破るまでに1年かかりました。溶けた鉄を鋳型に流し込む際に炭を入れる割合を変える、という方法を発見したことがきっかけでしたね。

そこからなぜフライパンになったかと言いますと、元々食べることが好きだったのがきっかけなんです。薄くしていった段階で、試しに仲の良い鉄板焼屋さんで試作の鉄板を使ってもらったんですよ。そうしたら、調理された料理がとても美味しいことに気付きまして、実はこのときまでは薄さが料理に影響するとまでは気付いてなかったんです(笑)。それで他社を巻き込むような余裕も無かったですし、不況の経験から自社で完結できるプロダクトの重要性を感じていましたので、自分たちだけで開発・製造ができるフライパンにしようと思ったんです。

──出来上がったときの評判はどうでしたか?

錦見:最初は個人的なコネクションから、ホテルオークラさんで実験的に使ってもらいました。そうしたら、料理が格段に美味しくなると絶賛されまして、そこから全国のホテル、レストランといったプロフェッショナル向けの展開を開始しました。高級食材の味が活きるということで、“料理界の革命”とまで言っていただけたんですよ。さらに地道な開発を重ねつつ、徐々に販路を広げていくことにしました。百貨店への販路拡張も問屋を通さず、自力で行いました。東急ハンズはバイヤーに直接商品を売り込むことができるんですが、バイヤーの方にまず1週間使ってもらい、それから店頭に置いていただけるようになりました。その後、名古屋店の調理器具の売上で1番になったんですよね。ひとつひとつの実績が呼び水になって、ジワジワと人気が定着していきましたね。

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魔法のフライパンで料理をしてみよう

魔法のフライパンを使うにはちょっとしたコツが必要ですが、料理初心者もすぐに使いこなすことができるように、オフィシャルサイトには多くのレシピブログや料理動画が掲載されています。今回はその中から、魔法のフライパンの良さがより実感できる「レアステーキの焼き方」をご紹介します。

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「魔法のフライパン」の名前の由来

錦見鋳造「魔法のフライパン」のFacebookページ 錦見鋳造「魔法のフライパン」のFacebookページ

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──魔法のフライパンの人気に火がついたのはいつごろなのですか?

錦見:実は、世に知られるようになったのはここ数年の出来事です。というのも震災後、消費が一斉に冷え込み、商品が全く売れなくなってしまったことがありました。既に受注していたものに対してのキャンセルも大量に受けました。それまではとにかくオーダーに応えるのに必至だったんですが、そのとき果たして商品の魅力をちゃんと伝えてきたか、という疑問が湧いたんです。振り返ってみると熱効率の良さから、逆にクレームが来ることもありました。焼く時間が短くなりますから、主婦の方々など、やり慣れた料理の手順が変わってしまいますからね。そういった部分をきちんとケア出来ていなかったんです。もっとお客様を大事にしなければならないと思いましてね、自分たちでアフターケアの情報も発信していくことにしたんです。

──具体的にどのような意識変革を行ったのですか?

錦見:まず情報発信を丁寧にすること。フライパンを使った料理動画を掲載したり、SNSや公式サイトを通じて質問やご意見に対しても真摯に応えていった結果、今まで自分たちが不透明だった顧客のニーズや売り方について知識を得ることができ、自信が持てるようになりました。

また、商品について圧倒的に伝わりやすくすることが大事だとも感じました。「魔法のフライパン」は、最初は少し分かり難い商品名だったんです。ある日、ローカルのテレビ局で取材を受けたときに「魔法のようなフライパン」とコメントをいただきまして、放送後の翌日から電話が掛かれば皆さん「魔法のフライパン」とおっしゃるんですよ。そこで商品名も会社のホームページも「魔法のフライパン」で統一することにしたんです。何年も作り続けてきた商品ではありましたが、顧客満足度と商品の伝わり易さを改善したことで、急速に知られていくようになりました。

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地方の下請け工場から世界へ!錦見鋳造が描くビジョン

製造段階で薄さ1.5mmになったフライパンの表面部分をなめらかにするため、1本ずつ手作業で研磨している製造段階で薄さ1.5mmになったフライパンの表面部分をなめらかにするため、1本ずつ手作業で研磨している

左は手作業で研磨後のフライパン。右は手作業を終え見栄えを機械で整えた後のフライパン 左は手作業で研磨後のフライパン。右は手作業を終え見栄えを機械で整えた後のフライパン

──これだけ人気がでると製造が追いつかないのがネックですよね?

錦見:そうですね。欲しいと思っていらっしゃる方には申し訳ない状況が続いています。ただ一方で、無闇に現製品に対して生産ラインを増やす訳にはいかないと思っています。

大体1日で100個程度を生産出来るのですが、研磨する工程が繊細なため、どうしても人力が必要です。そこが弊社のフライパンの薄さの生命線でもありますからね。ただ人を増やすことが改善策だとはあまり考えてないんですよね。また、一時的に大量に売れてしまうことでの在庫管理の難しさやブーム化のリスクもたくさん経験してきましたので、現在のクオリティを保ちつつ、新たな手法で量産体制を整えたり、さらに一層プレミアムな製品に向けてクオリティを向上させたりすることが、我々が取るべき手段だと今は考えています。

それと人材開発も、うちでは非常に気を使っています。キャリアがあっても、これまでの社会経験に縛られて頭が固くなっている人より、経験がなくても柔軟性をもって新しいことに挑戦していける人。かつバスケットボール部やテニス部出身のような、腕の力がある程度発達していて、礼儀を学んでいる人。加えてグローバルな視点をもてる人物である必要があります。さまざまな企業のメソッドを毎週のように紙に印刷して配って、自社の課題について皆で発言し合います。そういった人物と一緒に事業を拡大していきたいと思っていますから、ただ人を増やせば良いという意識はないですね。

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取材を振り返って

インタビュー中に出てくるワードもe-bayやPayPal、Googleといった、IT企業さながらなものが多かった錦見さん。良い製品を作るだけでなく、如何にお客様に知ってもらい、満足してもらうかがメーカーにとって大切だとおっしゃいました。また子供の頃の作文に“世に名を残したい”と書いていたそうで、そのためには人々から「すごい!」と驚かれるようなことをやらなければいけない、と熱く語っていただきました。錦見鋳造のように胸の内に高い志を持った企業だからこそ、オンリーワンの製品を生み出すタフさと、世界と渡り合うスピード感の両方を持ち合わせていられるのかもしれません。

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魔法のフライパン
錦見鋳造では、長年培った精密鋳造技術を基に、業界の常識を打ち破る厚さ1.5mmのフライパンを完成させた。最大の特長は、熱効率の良さにある。200℃に達する時間は、44秒(加熱調理器:卓上IH調理器 加熱条件:900W)とも言われ、食材を入れても温度が下がりにくく、鉄鋳物に含まれる炭素には遠赤外線効果もあるため、旨みを逃さずに調理が可能となっている。また、従来の3分の1の厚みにすることで、鉄鋳物にとってネックだった重さに対する問題も大幅に改善している。
http://www.nisikimi.co.jp/

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