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アノ人の気になるブックス マイブーム・オブ・ブックス2010「土着・裏日本史編」 ナビゲーター:イラストレーターなど みうらじゅん

たくさんの本の影響を受けて育ち、自身でも100冊以上の本を出版するなど、本と深い関わりを持つみうらじゅんさん。そんなみうらさんが、「マイブーム・オブ・ブック」というテーマで3冊の本をセレクト。後編となる今回は、「土着・裏日本史編」としてご紹介します。また、人生を変えた本との出会いや、「ひとり出版社」状態で本をつくっていた子ども時代についても伺いました。

みうらじゅんの1冊目:『偽書「東日流外三郡誌」事件』 「戦後最大の偽書」を生んだ、青森のインナーワールド

みうらじゅん

青森が好きで、恐山などグッとくるスポットをいろいろ巡りました。青森に関する本も集めたりしてました。なかでもこの本は、めちゃくちゃ面白かった。これは津軽地方のある農家から、門外不出の古文書が見つかった事件のルポルタージュ。その古文書には、古代の津軽には大和朝廷に対立する王朝があったと書いてあって、村やマスコミを巻き込んだえらい騒動になるんです。でも、学者がよく調べたら、紙が最近のものだとか、書いてるのが発見者本人なんじゃないかとか、いろいろ疑問が出てくるわけで。いわゆる偽書騒動。でも、それが広まった背景には、東北が中央に制圧されてきた歴史とか、古事記より前に書かれたものが見つかってないこととか、いろいろあるんですよね。
このほかにも青森には、キリストの墓があったりピラミッド伝説があったり、独特の歴史と文化がある。とても、おもしろい世界だと思います。

【作品紹介】
『偽書「東日流外三郡誌」事件』
青森県津軽地方で起き全国に広がった、ある古文書の真偽をめぐる一大論争。その騒動を10年にわたり追いかけ、「戦後最大の偽書」が生まれた謎と背景をひもといていく、地元新聞記者の奮戦記。


著:斉藤光政 発売日:2009年12月 出版社:新人物文庫

偽書「東日流外三郡誌」事件

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みうらじゅんの2冊目:『秦氏の秘教』 神秘のベールに包まれた「謎の渡来人」秦氏の正体

みうらじゅん

僕は子どもの頃、京都の太秦の近くに住んでたんですが、太秦の「秦」という字は秦氏から来ているということを知りました。秦氏の中でも一番有名なのが、秦河勝という人。秦河勝は、弥勒菩薩半跏像で有名な京都の広隆寺というお寺をつくった人で、聖徳太子のブレーンともいわれたものすごい豪族なんです。でもどっから来た何者なのか、いまいちよくわかってないらしくて、いろんな説が飛び交っている。空海的な謎があるんですね。たぶんあんまり深く掘り下げると、日本の歴史が変わりかねない。
家の近くに秦氏を祀ってある神社があって、昔よくじいさんと、仏像巡りの帰り訪れていました。この本には、秦河勝=ユダヤ人説とか『ムー』的な観点も出てくるんだけど、これもなかなかおもしろい世界ですよ。

【作品紹介】
『秦氏の秘教』
土木や織物の技術を伝え、芸術にも関与するなど「日本文化の基層」を築いた秦氏は、神道をはじめ陰陽道や修験道までを操る「秘教集団」だった……。秦氏と神々とのつながりを検証し、「謎の渡来人」の正体に迫る一冊。


著:菅田正昭 発売日:2009年11月 出版社:学研

秦氏の秘教

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みうらじゅんの3冊目:『八幡神の謎』 何時間でも熱く語りたい、八幡神のミステリ

みうらじゅん

八幡神というのも不思議な神様で、子どもの頃からずっと気になってました。八幡神は九州の宇佐に総本宮がある、日本で一番勢力の強い神様なんだけど、そのルーツが今一つわかっておらずで。たぶんこれも、なにか理由があって隠されているのかも知れません。あと、神仏習合を進めたのも八幡神ですね。日本で仏像を見ていくと、ぶちあたるのは神仏習合で……って、この話は何時間でも熱く語りたいところなんだけど、飲み屋では全く受けない話題ですよね。
学者が書いた八幡神の本も読んだけど、途中から急に難しくなっちゃうんですよ。でもこの本では、「宇佐八幡宮に祀られているのは、卑弥呼である」ってはっきり書かれてるわけです。どうも元社長さんの趣味が高じて出した本らしいんだけど。だから内容はあくまでもこの方の説で、信じるか信じないかは別の話なんだけど、とにかくスッキリします。たぶんこの方も、飲み屋でも熱くこの話をして煙たがられてたんじゃないかな。

【作品紹介】
『八幡神の謎』
宇佐が倭の宗廟だった歴史は、大和朝廷によって改ざんされた……。八幡の名の由来、祭神の縁起など、今なおいくつもの謎に包まれた八幡神。そのミステリーに大胆な仮説をたてて挑んだ、私的日本史。


著:大里長城 発売日:2003年11月 出版社:まんぼう社

八幡神の謎

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Close Up

みうらじゅん

土門拳さんの作品を見て、僕の中で怪獣と仏像が合体しました

僕はひとりっ子だったのと、親が「本を読む=教養が身につく」と誤解してたこともあって、本だけはいくらでも買ってもらえたんです。はじめは怪獣の本を、それから小学4年生で仏像に興味が移ってからは、仏像の本もずいぶん買ってもらいました。ただ「弥勒菩薩」とか般若心経の「掲諦(ぎゃーてー)」なんて漢字は、小学校の6年間で一回も漢字テストに出てこなかった。親は、勉強に活かされていないことに、まったく気づかなかったんですよね。

『日本の彫刻』(美術出版)という仏像の写真集は、クリスマスに買ってもらいました。そのなかの土門拳さんの写真がすごかった。四天王の広目天の眉間とか、甲冑だけとかが、見開きのドアップなんですよ。躍動感があって、それまで本や絵はがきで見てきた仏像のイメージじゃない。しかも土門さん曰く、「仏像は生きているから、早く撮らなきゃならない」と聞いて、なんだかわかんないけど、「すごい」と思って。そこから仏像がすごく好きになりました。当時好きだった『三大怪獣 地球最後の決戦』という映画のタイトルバックが、キングギドラのうろこのアップだったんですが、土門さんの写真とオーバーラップしました。それで僕の中で、怪獣と仏像が合体した瞬間です。

あと人生を変えた一冊といえば、中学3年生のときに買ってもらった『横尾忠則全集』(講談社)ですね。これはもう、開けた瞬間からクラクラきました。真ん中に、観音開きのカラーページがあるんですが、そこに横尾さんご自身の写真がたくさんコラージュされてるんですよ。なんだろうこれは、と思って。ロックスターのようなイラストレーターを初めて見たもんですからブッ飛びました。それで、すっかり影響を受けました。今、こんな格好をしてるのも、原点はここ。70年代の横尾さんのコスプレなんですよ。

みうらじゅん

小学生なのに、毎日過密スケジュールだった「ひとり出版社」編集長時代

実は自分、“エロスクラップ”というのを32年間続けていて、今270巻まできてるんです。グラビアアイドルの写真集を切り貼りし、エロ本の写真を混ぜて再構成して、マイフェイバリットな本を作るんです。もう雨の日も風の日も、毎日。買ってきたばかりの写真集を背表紙を外して破くんですから、相当男らしいやり口だと思いますよ(笑)。スクラップは、小学生の頃からずっと。怪獣の本も仏像の本も、買ってもらった日に切って、よくオヤジに怒られてました。

本や雑誌はいつか捨てられてしまうけど、スクラップは一応僕の作品ですから、親が捨てなかったんですよね。その手法を、小学生のときに学んだんです。さらに仏像スクラップもはじめて、「散歩道の寺々」というエッセイも書き、読者欄に「たいへんおもしろかったです」って自分で書いて、最後に和綴じして表紙つけて。そうして本棚に並べるのが僕の趣味でした。「ひとり出版社」の編集長だから、小学生なのにスケジュールびっしりで。毎日めちゃくちゃ忙しかったですね(笑)。

みうらじゅん

スクラッパーの半世紀を物語る、100冊の本

母方のじいさんが古美術が好きで、自費出版で本も出していたし、新聞の切り抜きもよくしてました。だから、じいさんの飛び血なのかもしれませんね。スクラッパー家系の遺伝子というか、貼りたくて貼りたくてしょうがなくなるんです。そうすることで、自分の中で消化できるんでしょうね。2009年に、デビュー30周年にあわせてパルコで「みうらじゅんの100冊展」というのをやったんです。数えたら自分の本が100冊以上あったことに驚き、やってることは昔と同じだなと痛感しました。出版社を通して、スクラップ帳をせっせとつくっているんですね、僕は。50年近く、そんなのばっかりやってるんです。

そういえば2月頃に久しぶりにマンガの本が出ます。“とん祭り”とか“いやげ物”とか、日本の土着文化にはずっと興味があったんだけど、新刊のタイトルはその名も『ドチャック(=土着)』。日本の古い家屋に住みついていたドチャックというキャラクターが、家の建て替えのために追い出されるという話です。捨てたいのに、何故か捨てられない。イヤなんだけど、何故か憎めない。そんなドチャックの姿は昭和生まれにはホロッとするんじゃないでしょうか。久しぶりのマンガ本です。宜しくお願いします。

みうらじゅん

みうらじゅん
イラストレーターなど

1958年 京都市出身。武蔵野美術大学在学中に「月刊漫画ガロ」で漫画家デビュー。独特の世界観が人気を呼び、イラストレーター、作家、ミュージシャン、ラジオパーソナリティーなど幅広い分野で活動。1997年、自身の造語「マイブーム」が流行語大賞受賞。また一昨年、一大ブームを巻き起こした「国宝 阿修羅像」を記念して発足された「阿修羅ファンクラブ」の会長としても知られる。著書に「アイデン&ティティ」「色即ぜねれいしょん」「ゆるキャラ大図鑑」など。ほか音楽、映像作品も多数。2003年に「アイデン&ティティ」2009年には「色即ぜねれいしょん」が映画化された。

<作品情報>
「ドチャック」 みうらじゅん著
装幀:みうらじゅん 四六判並製 144P 予価900円 2月発売予定

「わしズム」に掲載されたショートマンガを中心に編集。愛嬌と哀愁のとぼけ混合キャラ”ドチャック”が、消えゆく日本の土着性について鋭く追求か!? 著者の新キャラとして今後活躍が期待されるドチャックに注目、いや、顔の真ん中についてるものにも注目!!
※初版限定特典「ドチャックシール」付き!

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