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女性として共感できる3冊 ナビゲーター:フリーアナウンサー 住吉美紀

女性として共感できる3冊 ナビゲーター:フリーアナウンサー 住吉美紀

前回に続き、おススメの本をご紹介頂くのは元NHKアナウンサーの住吉美紀さん。自身が30代の女性として共感出来た本について紹介頂きました。また、興味のある分野を精力的に探究すると同時に、日々の交友関係からも様々な本との出会いがあるという住吉さんに、現在の読書スタイルについてお聞きしました。

住吉美紀さんの1冊目:『私小説 from left to right』日本語と英語、両方の言葉のニュアンスがそのまま味わえる1冊。

住吉美紀さんの1冊目

この作品を初めて読んだのは確か20代、同じ帰国子女の友人から薦められたのがきっかけです。まずパッとページを開いたときに、日本語なのに文章が横書きで、今までにない世界に連れていってくれそうだという期待感を覚えました。そして、読み始めてすぐ、「あっ、私の頭の中と同じだ!」と感激しました。というのも、日本語と英語がない交ぜに書かれているんです。著者の水村美苗さんも帰国子女で、「私小説」というだけに彼女自身の体験が色濃く反映された作品だと思います。主人公は12歳で渡米して、日本語と英語、両方の世界観の中で育った女性。その主人公が、アメリカにも日本にも馴染みきれない中途半端な自分の存在について、日本語に英語独特の言い回し、慣用句などを織り交ぜながら語っているんですね。その両方の言語を行ったり来たりしながら思考する感じや、それぞれの言語特有のニュアンスを含む言葉は訳さず使っている感じが私の頭の中と同じだと思い、強烈に作品に惹かれていきました。
また、アメリカと日本、どちらにも居場所がないという主人公の感覚に強く共感しました。私は小学校のときにアメリカ、中学校は日本、高校でカナダと、日本と北米を行ったり来たりしながら育ったのですが、北米にいても日本にいても、違和感を覚えたり、自分が周りから浮いているように感じたりすることが未だに多々あります。ふたつの言語・文化の境界線上に生きていて、時折とても孤独を感じたりする。その独特の感覚が、「私小説」の中にそのまま描かれていたんです。あ、同志がいた!と思いましたね。痒いところに手が届く、というとおかしいですが、こういう本ってなかなかないと思い、大切にしている本です。もちろん基本的には日本語ですし、難しい英語もほとんどないので、その不思議な世界観に浸ってみたいという方に是非読んでいただきたい作品です。

【作品紹介】
『私小説 from left to right』
野間文芸新人賞受賞を受賞した、前代未聞のバイリンガル小説。 「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を通じて浮き彫りになるものとは…。


著:水村 美苗  発売日:2009年3月  出版社:筑摩書房

私小説 from left to right

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住吉美紀さんの2冊目:『言い寄る』キレイな日本語と素敵な女性像にうっとりする1冊。

住吉美紀さんの2冊目

私がエッセイを書いたとき担当してくれた女性編集者に、「住吉さんが好きそうな小説が復刊されたから、読んでみたら」と紹介され、手にしたのが田辺聖子さんの三部作、『言い寄る』、『私的生活』、『苺をつぶしながら』。軽い気持ちで読み始めたのですが、読み進むうちどんどんハマり、最終的に“惚れました”。
まず、日本語の表現がとにかく綺麗で美しいんです。舞台となっているのが神戸で、主人公は30代の独身女性、乃里子。その乃里子の視点で語られているので、全体的に大阪弁や神戸のことばで綴られているんですね。その関西ことばが、上品でオシャレで、温かくて、少し色っぽい。そして、今では口語で友達とこういう言葉は交わさないなという言い回しとか、ちょっとした擬態語の表現とか、日本語の美しさと温かさが詰まっているんです。例えば、乃里子が友人に「オマエはおめでたい女であるのう」と言う「あるのう」が可愛かったり、恋心の感情を「わたしのやっさもっさの感情」と表現する「やっさもっさ」の響きにくすぐられたり……もちろん、30年前に書かれたというのもあるかもしれませんが、それ以前に、田辺さんの言葉選びの美しさ、表現のお茶目さが大きいのだと思います。そう、美しいだけじゃなくて、可愛くてお茶目なんですよ。それが、“惚れました”と思うほど惹かれる理由かもしれません。私自身もこういう言葉が使える女性になりたいと、強く思いました。 それでいて、乃里子のさまざまな恋心や、仕事と恋の狭間で生きる感じとか、30代女性として思うことは今の私たちと本当に同じで、「そうそう、わかるわかる」と 深く頷けます。乃里子にどんどん親しみが湧いてきて、彼女の女らしさや色っぽい可愛さには女性として憧れてしまうところがあります。
また、少しレトロな雰囲気も魅力のひとつです。本の装丁や、印刷に使われている字体もレトロ気分を盛り上げてくれるんですよね。読み終わる頃には、ちょっと昭和なワンピースを身に纏い、お出掛けしたくなるかもしれません。

【作品紹介】
『言い寄る』
愛してないのに気があう剛。初めての悦楽を教える大人の男、水野。恋、仕事。欲しいものは手にいれた、31歳の乃里子。でも、唯一心から愛した五郎にだけは、どうしても言い寄れない。田辺聖子「最高傑作」三部作。30年の時を経て復刊第1弾。


著:田辺聖子  発売日:2007年6月  出版社:講談社

言い寄る

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住吉美紀さんの3冊目:『W/F ダブル・ファンタジー』30代になったからこそ、共感出来る一冊。

住吉美紀さんの3冊目

20代の頃に好きで読んでいた『おいしいコーヒー』シリーズの著者、村山由佳さんの作品ですが、『おいコー』シリーズの印象とは全然違う作品で、まずは読みながらびっくりしました。ドロドロしたところや、女性のずるいところとか本音とか、とにかく“リアル”だったんです。
主人公は35歳の脚本家の奈津。奈津が、本当の自分に目覚め、現状をひっくり返すリスクを負っても、その“本当の自分”に誠実に生きていこうと、女としての生き方を開拓していく物語です。村山さん自身が、たぶん女性としていろいろ悩み、ぶつかり、行動し、思ってきたことをかなり覚悟してさらけ出しているような、そんなキレイ事ではない雰囲気に溢れていて、強烈な説得力があるんです。主人公がどういう判断をするのだろうか、どのようにストーリーが展開していくのだろうかと、ページをめくる手が止まらないほど引き込まれました。 でも、私が20代前半で読んでいたら、おそらくこの作品の魅力はわからなかったのではないかと思うんです。女性って、20代より30代の方が自分に正直に生きるようになってくる気がします。自分の欠点や、イヤな部分も少しずつ受け入れられるようになってくるというか。誰にでも“黒い”部分ってあると思うのですが、20代ではそれを認めたくないし、向き合えずにいて、周りによく見られようと生きていたりするわけです。でも、歳を重ね、その“黒い”部分を認めざるを得ない経験を重ねると、30代がすごく楽になり、自分らしく生きられるように変わってくる。そんな、女性の変化の過程がひとつひとつ生々しく、包み隠さず綴られている小説です。私が特に好きな一節は、
「少なくともこの人生は一度きりなのだ。自分で自分の尻を拭う覚悟がある限りは、好きなことをして生きてやる。そのための孤独なら、甘んじて引き受ける。そういう生き方しか自分にはもう出来ない、と思う」
そうだ、そうだ!と思いました。女性としてかっこいい。壁にぶち当たって、悩んでもあきらめずがんばってきた女性は、主人公の生き方に強く共感できると思います。男性が読むと、「女性ってコワイな」って思われるかもしれませんし(笑)、女性という生き物のおもしろさがわかるかもしれません。

【作品紹介】
『W/F ダブル・ファンタジー』
村山由佳による中央公論文芸賞(第4回)、柴田錬三郎賞(第22回)、島清恋愛文学賞(第16回)受賞作品。奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ-。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら-そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。


著:村山由佳  発売日:2009年1月  出版社:文藝春秋

W/F ダブル・ファンタジー

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有村昆

住吉美紀
フリーアナウンサー

1973年4月5日生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業。1996年 アナウンサーとしてNHK入局。「第58回NHK紅白歌合戦(2007)」では総合司会を務め「プロフェッショナル 仕事の流儀」、「スタジオパークからこんにちは」などの人気番組を担当。2011年4月よりフリーに。 小学校時代はアメリカ・シアトル、高校時代はカナダ・バンクーバーで過ごした経験から英語を生かした海外取材や中継も多くこなす。好奇心旺盛で型にはまらないキャラクターが人気。

衣装
シャツ:Q♥ ¥12,600(税込)  Q♥ tokyo TEL:03-5456-9117

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