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風を変えることに成功したバルミューダ 代表寺尾玄氏に迫る ナビゲーター:インテリアスタイリスト&ジャーナリスト 川合将人

風を変えることに成功したバルミューダ 代表寺尾玄氏に迫る ナビゲーター:インテリアスタイリスト&ジャーナリスト 川合将人

こんにちは。スタイリストの川合将人です。今回は、第一線で活躍するデザイナーやクリエイターの生の声をお届けする、インタビュー企画の第2回目となります。ご登場頂くのは、近作の新型扇風機のヒットで注目を集めている気鋭のプロダクトメーカー、バルミューダの代表である寺尾玄さん。驚くべきメーカー設立の経緯からそのデザイン哲学までを、多いに語ってもらいました。どうぞお楽しみください!

-バンド解散後に学んだ寺尾流プロダクトデザイン-東急ハンズで聞き込みをしたり、近所の町工場で学んだ

川合:まずは寺尾さんご自身の経歴や、バルミューダを設立することになるきっかけなどをお伺いしたく思います。現在日本で活躍しているメーカーさんとしては、かなり異色の経歴をお持ちだとお伺いしていますが、いかがでしょう?

寺尾:実はこの会社を立ち上げる以前は10年くらいバンドで音楽活動をしていたんです。ただ、ちょうど2000年頃にある程度、ミュージシャンとしてやるべきことをやり尽くしたというか、燃え尽きてしまった。そこで次に何を夢見ようかと自問した時にモノ作りの道を選んだわけです。

川合:それはまた急な展開ですね!なぜモノ作りの道を選ばれたんですか? 具体的に何か影響を受けた製品などがあったのでしょうか?

寺尾玄

寺尾玄

寺尾:まぁ、もともとモノ好きではあるのですが(笑)、影響を受けたと言えばハーマンミラーのアーロンチェアの存在です。モノとしての魅力が素晴らしいですよね。クールで。そして何よりユーザーメリットの大きさや使いやすさにも感銘を受けていました。それから段々と、こんな格好の良い製品を作るメーカーを作りたいという思いが強くなり、独自にリサーチを開始しました。

川合:いくらモノ好きだったといえども、普通の発想ならメーカーを作ろうという考えにはならないと思いますが(笑)デザイン関係の業者さんや工場など、何かネットワークはお持ちだったのですか?

寺尾:いえいえ、何もありませんよ。完全な素人でした(笑)。
だから最初は東急ハンズに行って店員さんに素材や作り方の聞き込みをしたり、近所の町工場に行ってこんなものが作りたいと持ち込んだりしました。そのうちに、あるアルミ切削の工場の人が興味を持ってくれて、工場の機械を自由に使っていいから自分で作ってみなと言われて。そこで自分の手を使って実際にモノ作りの基本を学んでいき、2003年にノートパソコン用の冷却台、《X-Base》をリリースしました。これと同時に会社を設立してwebで製品の販売を開始したのですが、結構な反響があって注文が入ったんです。当然部品は工場を借りて自分で手作りしていましたが、メーカーとしては、ここからスタートしたワケです。

川合:いやはや、ものすごいベンチャースピリットですね。

X-Bose

バルミューダ初の製品 パソコンの冷却台《X-Base》

-技術革新で消費者の心を掴んだ、GreenFanの成功-これで駄目だったら終わろうという覚悟で挑んだ

Highwire

デスクライト《Highwire》。写真は2009年に発売された新型 《Highwire Smooth》

Highwire

数多くの試作機を作成し性能を追求。写真は《Highwire》のヘッド部分。

GreenFan

倒産寸前のところまでいきついて生まれたのがこの《GreenFan》

川合:その後にデスク周りの製品をいくつか発表されて、次はデスクライトですね。《ハイワイヤー》に《エアライン》と、どちらもハイパワーのLEDを組み込んだモデルでした。この頃になるとwebだけでなく実際に販売店で製品を見れる機会も増えましたが、反響はどうだったんですか?

寺尾:最初は非常によかったですね。ところがリーマンショックの影響なんかを受けて、世間的に高価な製品が売れなくなってしまった。当時、バルミューダは格好良い製品を作るということだけを目指していたので、素材にも機能性にも非常にこだわっていた結果、どれも価格が高くなってしまっていたんです。「欲しがってはもらえても、選んではもらえなかった」、ということですね。それから売り上げが伸び悩み、会社としては倒産寸前の綱渡りの状態がしばらく続いたんです。本当に困って考えに考え抜きまして、格好が良いだけでは駄目なんだとここでようやく気付きます。多くの人に必要とされる製品を作らないと、と。そこから省エネで音の静かな扇風機《GreenFan》の開発に着手しました。

川合:ちょうどデザイン家電ブームみたいのが落ち着いた頃ですよね。PC周りの製品の印象が強かったバルミューダから、いきなり扇風機が登場したので驚いたのを覚えています。しかも、機能においても他のメーカーと全く違ったアプローチがされていて。

寺尾:そうですね、我々としてはただ外装だけをクールにして値段を2倍にして売るつもりはないんです。その意味で、一時のデザイン家電メーカーさんとは違うと自負しています。実は当初から省エネルギーの冷暖房機器は絶対に必要になると思っていました。地球温暖化と石油燃料の枯渇。近い将来に必ず人々が困る問題であろうと。《GreenFan》で目指したのは、良い扇風機です。試しに他社メーカーの扇風機の風をたくさん浴びてみましたが、これが嬉しいことにどれも気持ちよくない(笑)。色んな人に自然の風と扇風機の風のどちらが好きか聞きましたが、100%が自然の風という回答だった。だったら自然の風を生む扇風機を作れば売れるのではないかと。

川合:大ヒットした《GreenFan》ですが、開発はどのように進められたのですか?

寺尾:もうお分かりかと思いますが、流体力学に関してももちろん何の知識も持ち合わせていなかったので(笑)、それこそ独学で流体力学の書籍などを読んで勉強しましたが、ヒントになったのはお世話になっていた工場での扇風機の使い方でした。いったん風を壁に当てるんです。これによって風の渦が崩れ、柔らかい風になって広がっていく。まさに自然の風に近い感覚でした。そこから通常とは違う、内側と外側で送風効率の異なる2段が一緒になった羽根を考案します。これによって送り出された内と外との2種類の風が前方60センチくらいのところで壁にぶつかるようにお互いに衝突し、自然に近い柔らかく心地の良い風を広げていく。試作機を作って試したら本当に静かで予想以上に心地よい風が出てきて、もう進めるしかないと決めて開発に踏み切りました。結果的には好評を博したわけですが、会社として危機的状況だっただけに、これで駄目だったら終わろうという覚悟で挑んでいたんです。

川合:苦労した末の大成功、本当に良かったですね。こんなに波乱万丈な開発秘話、初めてです(笑)しかし寺尾さんの人柄が良くわかったと同時に、日本を変えていく、世界を変えていくのはこういった人なんだとも思いました。

寺尾玄

1枚で2種類の風を送ることにより自然の風の再現が可能に

川合将人

川合将人
インテリアスタイリスト&ジャーナリスト

「Casa BRUTUS」や「ELLE DECO」などの雑誌や広告、住宅メーカーのカタログ、展示などを中心に、コンテンポラリーなアイテムを巧みに取り入れた空間を提案しています。一見コーディネートの難しそうな個性的なアイテムもうまく織り交ぜながら空間を仕立てていく、その作風には定評あり。また、豊富な経験、知識をもとに各メディアで執筆活動も展開しています。
http://www.kawaimasato.com

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