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デザイナー 喜多俊之さんに聞く「デザインの力」 インタビューアー:My VAIO MAGAZINE編集部

デザイナー 喜多俊之さんに聞く「デザインの力」 インタビューアー:My VAIO MAGAZINE編集部

1967年に発表した「SARUYAMA」をはじめ、椅子、キッチン用品、時計、テレビ、ロボットなど、美しさと機能性を兼ね備えた多くのプロダクトを手がけ、世界的にその名を知られるデザイナーの喜多俊之さん。教育者、アドバイザーとしてデザインの振興にも尽力する喜多さんに、大きな可能性を秘めた「デザインの力」について伺いました。

「豊かな暮らし」を体験するために、イタリアへ

喜多俊之

──1969年にイタリアに渡られ、今も日本とイタリアを拠点に活動されています。今でこそ海外で活躍する日本人デザイナーは少なくありませんが、その時代に、しかも27歳という若さでの渡欧は大きな決断だったのではないですか?

喜多:それが、わりと気軽に行ったんですよ。言葉もできないまま、辞書ひとつだけ持ってね(笑)。私とイタリアには不思議な縁がありまして。デザイン視察でヨーロッパを訪れたときに、「子どもの頃に、来たいと思ってたのはここと違うかな」と思ったのがイタリアだったんです。それで翌年、思いきって行ってみました。そしたら、ラテンの人はたいへん気さくでね。私も関西の人間ですから、波長も合いまして(笑)。スッと入っていけました。それで3ヶ月経ち、日本に帰ろうと思っていたときに、あるデザイン事務所に誘われて留まることになったんです。

イタリアで驚いたのは、当時日本と同じ敗戦国なのに、とても豊かな暮らしをしていたことです。みんな家を人生の舞台だと考えて、すてきなインテリアをしつらえ、人を招いたり招かれたりして生活を楽しんでいる。そうした「もてなしの心」は、かつて日本にもありました。ところが戦後、日本は産業中心の社会になって、家はモノを収納する納戸のようになり、暮らしが置き去りになってしまった。しかしデザインの感性や美意識は、生活文化から育まれるものなんです。ですからイタリアのライフスタイルを体験できたことは、私にとって大きな経験になりました。

デザインから見えてくる「少し先の未来」

──1980年に発表された「WINK」チェアは、色や形の美しさだけでなく、使う人への心遣いが感じられる作品ですね。一方で、日本の伝統工芸とのコラボレーションにも長年注力されてきたと伺っております。

喜多:「WINK」チェアは、イタリアに渡って10年目にできた作品です。そろそろ日本に戻ろうと思ってたときにあれがヒットして、また帰れなくなりました(笑)。アートは自分がいいと思うものを作ればいいんですが、デザインというのは、人への思いやりなんですね。座り心地がいいとか、使いやすいとか、あるいは使う人がカッコよく見えるかとか、人にどう喜んでもらえるかが大切なんです。それはちょうど手元にある素材で、どんなおいしいものが作れるかと考える料理人と似ているかもしれませんね。

「WINK」チェア

背の角度やヘッドレストの耳を自由に動かすことのできる「WINK」チェア

WAKAMARU

高齢者介護を目的に開発した、世界初の市販型ロボット「WAKAMARU」

照明器具「TAKO」

美濃の紙職人との出会いから生まれた、手漉き和紙を使った照明器具「TAKO」

40年前から、和紙や漆などの職人と一緒にモノ作りもしてきました。日本の伝統工芸の職人たちはみな、モノづくりに心を込めるんです。千年以上の歴史があるそうした日本のモノづくりの技術や姿勢を、なんとか次の時代に引き継ぐお手伝いがしたい。使えば残る、そのためには使い方を提案すればいいと考えて、手漉きの和紙を使った照明器具「TAKO」などを作りました。こうした活動は、今もライフワークとして続けています。

今アジアの国々では、政府がデザイン=資源と考えていますから、国家プロジェクトとしてデザイン振興に力を入れていて、私も中国、タイ、シンガポールなどでアドバイザーを務めています。大学でも教えているので、なかなか忙しいんですよ(笑)。でも、楽しいですね。デザインは人を幸せにする仕事ですから。またデザインは、刻々と変わっていく時代をキャッチしないといけない。それがスリル満点で楽しくて。時代の最先端を、少し先の未来を見るということがおもしろいんです。

喜多俊之

喜多俊之
プロダクトデザイナー

1942年、大阪生まれ。
浪速短期大学(現・大阪芸術大学短期大学部)デザイン美術科工業デザイン専攻卒業。1969年より、日本にとどまらず、環境および工業デザイナーとして、イタリアを始め、国際的に制作活動を拡げていく。家具、液晶テレビなどの家電、ロボット、家庭日用品に至るまで、分野を超え、多くのヒット商品を生む。作品は、ニューヨーク近代美術館、パリ国立近代美術館、ミュンヘン近代美術館等、世界のミュージアムに多くコレクションされており、近年は、日本だけでなく、ヨーロッパ、アジアなどで、セミナーやワークショップを開く等、教育活動にも力を入れている。また、ライフワークとして、日本の伝統工芸に取り組む他、地場産業を活性化する仕事に関わり続けている。大阪芸術大学教授。

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