本文へ

製品情報>“VAIO”>My VAIO>My VAIO MAGAZINE>Item>デザイナー柴田文江が見つめる、生活の中のデザイン

My VAIO MAGAZINE

デザイナー柴田文江が見つめる、生活の中のデザイン インタビューアー:My VAIO MAGAZINE編集部

デザイナー柴田文江が見つめる、生活の中のデザイン インタビューアー:My VAIO MAGAZINE編集部

ベビー用品、キッチン家電、体温計、携帯電話など、身近にある日用品を中心に、多くのヒット商品を生み出しているインダストリアルデザイナーの柴田文江さん。触れてみたくなる優しさと、ずっと使い続けたい愛着を感じさせるデザインは、「デザイン好き」の枠を超えて広く家庭にも浸透しています。生活の中に根付くデザインはどのようにして生み出されているのか、デザインの裏側をうかがいました。

自分の内側に向かうことで、普遍性が見えてくる

──代表作であるオムロンの電子体温計「けんおんくん」や、炊飯器をはじめとした象印の「ZUTTO」シリーズでは、それまでにない斬新なデザインが注目を集めました。そのほかにも、大量生産されるプロダクトを多く手がけていらっしゃいます。

「けんおんくん MC-670」グッドデザイン賞を受賞した柴田さんの作品。

「けんおんくん MC-670」
iFデザイン賞金賞を受賞した柴田さんの作品。

柴田文江

柴田:特に、今までと違うものを作ろうとして、取り組んだわけではないんです。私はデザインするときに、そのモノが、本来どういう形が適しているかを考えるようにしているんですね。たとえば体温計の場合、従来のものは水銀計でしたから先端が細く作られていましたが、今はもうその必要はないのではないかと。そして体温計は「計る」「読む」という2つの機能が基本なので、それに適した合理的かつ自然な形を見つけよう、というふうに。ユーザーとして持っていた既成概念(デザインのイメージ)をできるだけ無くして、フラットな気持ちでモノと向かいあうように心がけています。

大量生産のものだからと、たくさんの人に受け入れられるものを探すのは、すごく難しいですよね。逆に、イチ生活者である自分の内側に向かっていくと、普遍性が見えてくることもあるんです。たとえば“詩”は、個人のプライベートな心のうちを言葉にしていますが、それがみんなの共感を得るものです。モノづくりも、初めから70%の人に受け入れられるものを探すのではなく、自分にとっての100%を探せば、それがいろんな人の80%になるかもしれない。その作業は、大変だけど楽しいんですよね。

よく、若いデザイナーさんにも「どうやって自分が作りたいものを製品にするんですか?」と聞かれるんですが……モノ作りって、必ず何かしらの抵抗があるんですよね。「もっと尖ってくれ」なんて言われることはあまりなくて、どうしても丸くなるほうにすすんでしまう。だけど、作る人はみんなそれと戦っているはずだから、そこで言い訳をしてもしょうがない。私は、いいデザインを考えるだけでなく、それを実現するのもデザイナーの能力だと思っていて。それには交渉力やプレゼン力ももちろんですが、やっぱりデザインで説得していくことが、一番大切だと思っています。

モノがなかった昔と違い、今はつくることが必ずしもポジティブな行為ではありません。それに、ちゃんと自分の価値観を持つ人が増えて、本質的なものが見抜かれるようになったと思っています。そういう時代に、モノが人に何を与えられるか。それは使うことで、暮らしが楽しくなったり、気持ちが少し豊かになることだと思うんですね。デザインって、そんなふうに人の生活に関われるものだと私は思っているんです。

これまでデザインが触れてこなかったものを、光の下に出してみたい

──近年は日用品だけでなく、カプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」や次世代型自販機「acure」など、手がけられるものの幅も広がっていますね?

柴田:今、私たちは暮らしの中で、このスマートフォンのように美しいモノを使っているけど、実は身の回りにあるのは、そうではないものがたくさんあります。カプセルホテルや自動販売機もそうでした。自販機ってみなさん普通に使っていますが、考えたら何年もデザインが変わってないし、カプセルホテルも初めて泊まったときは 、あの独特の雰囲気に泣きそうになりました(笑)。でもどちらも、システム自体はいいところがたくさんある。そういうデザインがこれまで触れてこなかったものを、チャンスがあるなら、光の下に出したいという思いがあったんです。

私は自由を得るために、もっといろんな選択肢を作りたいんです。ホテルにしても「お金がある人はリッツカールトンで、お金がない人はカプセル」というだけでなく、「お金はあるけど、今日は3時間しか寝る時間がない」というときの選択肢が欲しい。デザインは、モノだけでなく思考としてあるものだから、デザインの力を借りれば、そういう選択の自由が広げられる。美しいデザインアイテムを手がけるだけでなく、「これ、本当にこのままでいいの?」というモノの価値を問うことも、デザイナーの役割だと思うんです。

柴田さんが手掛けた京都にあるカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」

柴田さんが手掛けた京都にあるカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」

JR東日本管内に自動販売機「acure」

JR東日本管内に自動販売機「acure」

柴田文江

柴田文江
インダストリアルデザイナー Design Studio S代表

1990年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、東芝デザインセンターを経て、1994年Design Studio S設立。2003年よりグッドデザイン賞審査委員を務める。エレクトロニクス製品から日用雑貨までインダストリアルデザインの領域で活動をしている。主な作品は、「コンビ ベビーレーベルシリーズ」「無印良品体にフィットするソファー」「JREWB 次世代自販機」 「オムロン電子体温計けんおんくん」など。毎日デザイン賞、グッドデザイン賞金賞、他多数受賞。

過去の記事はこちら

他カテゴリの記事を読む

ページトップへ