発掘!アーティスト

未開拓のシーンを切り開くエクストリームなアーティストをご紹介。
案内役は、連載オリジナルキャラクターのせん太くん。

2014.12.18

立体か?二次元か?
シュールでクールな鉄筋彫刻

プロフィール

日本各地に存在するさまざまなエクストリーム・アーティストをせん太くんが訪ね歩き、アートの極意を聞き出していく連載シリーズ「発掘!アーティスト」。第15回は鉄筋彫刻家の徳持耕一郎さんをご紹介します。ジャズミュージシャンのライヴをスケッチし、それを鉄筋を使った彫刻に仕立てるという作品を20年に渡って発表してきた徳持さん。線画のようでありながら、立体的な表現も織り込まれた不思議な作品の数々を、せん太くんがレポートします。

ニューヨークでジャズと出会った

せん太:今回は徳持耕一郎さんを訪ねて鳥取にやって来たッス!うーん、徳持さんの作品は写真で見ても、生で見ても、何とも言えないシュールな魅力がありやすねえ……。空間のなかに線画が浮かんでいるような感じがするッス。

徳持耕一郎:自分では「2.4次元」なんて説明しているんだよね。二次元と三次元の間なんだけど、ちょっと二次元寄り、みたいな。

せん太:平面と立体だと、どっちの表現を最初に始めたんスか?

徳持耕一郎:もともとは木版画をやっていたんだよ。子供の頃に切手を集めていたんだけど、特に浮世絵を使ったものが好きでね。浮世絵が木版画ってことを知って、年賀状を木版画で刷ったりしていたよ。

せん太:渋い子供ッスねえ。

徳持耕一郎:その後、進路に悩むなかで「俺はアートをやる」と決めて大学を中退して、版画の専門学校で3年間勉強したんだ。社会人になってからも、グラフィックデザインの仕事をしながら版画を彫り続けては、いろんな展覧会に応募していてね。そんな時に、ある関西のギャラリーの方から「ニューヨークで展覧会をやらないか」と声をかけられたんだ。

せん太:チャンスが巡ってきたわけッスね!

徳持耕一郎:そうだね。その時は、浮世絵や日本画をベースにした、掛け軸とか屏風仕立ての版画作品を発表したんだ。なかなか良い評判をいただいたんだけど、それよりも作り手としてニューヨークのカルチャーに触れることができたことが大きかった。日々、いろんなアートの人たちがやって来て、話をしてね。そういうことがいちいち刺激的だったんだ。

せん太:徳持さんの作品はジャズのミュージシャンをモチーフにしていやす。

徳持耕一郎:展覧会場のすぐ近所に有名なジャズクラブの「ブルーノート」があってね。滞在中、夜はジャズを聴くかミュージカルを見るか、みたいに過ごしてたんだ。で、お酒を飲んでライヴを見ながらナプキンにスケッチしていたんだけど、その感じがなんだか気持ち良かった。それまで10年間取り組んできた版画はたくさんの色を使うけど、スケッチはモノクロの線だけで表現する。そのシンプルさがとても新鮮だったんだ。ニューヨークで2回目の展覧会をやった後に故郷の鳥取に帰ってきたんだけど、それからはスケッチにのめり込んでいった。鳥取のジャズクラブにずっと通ってね。

せん太:そのスケッチを鉄筋の作品にしたのはなんでなんスか?

徳持耕一郎:ジャズのライヴと連動した展覧会を開催したことがあったんだけど、その会場がとても大きくてね。版画とかイラストの作品だと空間が埋まらなかった。そこで、実家が鉄工所の友達に頼んで、スケッチを鉄筋にしたものを作ってもらったの。

せん太:最初は他の人に作ってもらったんスね。

徳持耕一郎:その友人が当時は仕事をしていなくて暇そうだったからね(笑)。それがとても評判が良かったので、また作ってもらおうと思ったら「就職するからできない」って言われて、じゃあ自分で作るしかないか、と。僕の親父が昔、工業高校の教師をやっていたんだよね。それで、親父に溶接の技術を教わることができたんだ。ラッキーなことに鉄筋作品を始める環境が揃っていたんだね。

ジャズを通して人間を描く

せん太:具体的には、どうやって作っていくんでしょう。

徳持耕一郎:鉄筋の作品は、常にスケッチをもとにしている。スケッチに合わせて、鉄筋を切って、曲げて、溶接して、もう一度スケッチに合わせてみて……みたいな行程だね。鉄筋の作業場に入ると、自分のスイッチが切り替わる。スケッチは作家として描いているけど、鉄筋は職人として仕上げているという感じだね。スケッチしたものを鉄筋で忠実に形にすることだけを考えて、ほかのことはあまり考えない。それがまた楽しいんだ。

せん太:版画とは技法がまったく違いやすね。大変じゃなかったスか?

徳持耕一郎:いやあ、手法の違いも、平面と立体の違いも、おもしろくて仕方なくて。とにかくどんどん作りたかったんだ。

せん太:ジャズミュージシャンというモチーフに惹かれたのはどうしてスか?

徳持耕一郎:僕のなかで、ジャズのスウィングしていくスピード感と、スケッチのスピード感とが合致したところはあるかな。それから、モノトーンの世界がジャズの世界に通じるとも思ったんだよね。いろんな音を使うわけではないけど、そこからいろんな色が見えてくるという感じかな。

せん太:なるほどなあ。確かにどの作品にもスピード感がありやす。

徳持耕一郎:ミュージシャンは演奏しながらずっと動き続けているわけでね、それをササッとスピーディーに描くことで動きを捉える。すべてを描かず、あるところは省略して、あるところはデフォルメしながらね。

せん太:シンプルな筆致からジャズのアドリブが聴こえてくる気もするッス。

徳持耕一郎:おもしろいことに、ジャズを生で聴きながら描くことでしか、この線にならないんだよね。家でライヴの映像を見ながらではダメ。その場で体感しながら描くことで生まれる何かがあるんだね。それから、一流の演奏家のライブをスケッチしたら良い絵になるというわけではなくて、アマチュアでも構わない。そういう意味で、僕はジャズを表現しているわけではなくて、ジャズを通して人間を描いている。いまを生きている姿を表現したいんだ。

せん太:こだわっているところはありやすか?

徳持耕一郎:僕は指フェチでね、指の表現にはこだわっている。演奏家の力の入れ具合は指先に表われているから、そこを汲み取るようにしている。それから、線の太さで遠近感を出しているんだけど、そのノウハウは浮世絵から学んだんだよね。

せん太:徳持さんの原点にある浮世絵に回帰したんスね。

徳持耕一郎:ニューヨークを体験することで、日本の作家であることを強く意識したんだよね。そこで日本画や浮世絵に通じる作風に行き着いたところもあると思う。

せん太:これからはどんな作品を作っていくんスか?

徳持耕一郎:ちょっと前から針金の作品を作ったり、最近は毛糸を使った作品を発表したりもしているんだけど、みんな徳持は鉄だと思っているから唖然とした反応ばっかりでね。鉄が曲げられなくなったと思ったのか、「お体でも悪いんですか?」なんて聞かれたこともあったよ(笑)。

せん太:新しいチャレンジをいろいろやってるんスね!

徳持耕一郎:もちろん鉄筋彫刻は外せないけど、それ以外にもいろんな素材を使って線の表現を追求していきたいね。最終的には、線を見ただけで徳持の作品だとわかるところまでいけたらいいなと思ってるよ。

徳持耕一郎さんの鉄筋彫刻アートを動画で紹介!

徳持耕一郎 Profile

1957年鳥取市生まれ。江戸時代の浮世絵に魅せられ、大学を中退して版画全般を学び、木版画の作品を約10年制作。93年より鉄筋彫刻の作品を作り続けている。
徳持耕一郎オフィシャルサイトhttp://www.hal.ne.jp/saurs/

せん太 Profile

田舎から出てきたものの、やりたいことが見つからず、日々自分探しをしているピーターパン男子。今回の連載を通しさまざまなアーティストに会うことで、自分が極めるべき道を見つけたいと思っている。