発掘!アーティスト

未開拓のシーンを切り開くエクストリームなアーティストをご紹介。
案内役は、連載オリジナルキャラクターのせん太くん。

2015.01.22

ミクロの手作業!
一万羽の折り鶴アート

プロフィール

日本各地に存在するさまざまなエクストリーム・アーティストをせん太くんが訪ね歩き、アートの極意を聞き出していく連載シリーズ「発掘!アーティスト」。第16回は折り鶴をモチーフにした作品を発表している小野川直樹さんをご紹介します。小野川さんが現在、メインで取り組んでいるのが「鶴の樹」と呼ばれるシリーズ作品。極小サイズの折り鶴を木の枝に葉っぱのようにあしらったそれらの作品は、とてつもなく緻密ながらインパクトは絶大! 美しい作品の数々や驚きの制作工程をせん太くんがご案内します。

子供の頃から折り紙好き

せん太:新春らしい鶴の作品を見学しに、今日は小野川直樹さんの制作現場にやって来やした。この折り鶴の花……すげーッス!どうやって作ってるんスか?

小野川直樹:せん太くん、明けましておめでとう。鶴を折るのは手作業だよ。鶴を木に取り付ける時はピンセットを使ったりするけどね。

せん太:このミクロな折り鶴を手作業で!何か特殊なテクニックがあるんスか?

小野川直樹:一般的な折り鶴の作り方とほぼ同じ。制作を重ねるうちに小さく折れるようになったんだ。我流で体に覚えさせたようなものだから、作り方のコツを説明するのは難しいなあ。

せん太:説明不可能な匠の技なんスね……。もともと折り紙が得意だったとか?

小野川直樹:折り紙は小さな頃から好きで、とりわけ小学生の時にハマったんだよね。

せん太:折り紙って身近なものだけど、小野川さんの世代でハマるってのは珍しいんじゃないスか?

小野川直樹:そうかもしれない。とにかく折るのが楽しかったんだよね。絵を描いたりすることも好きで、もの作り全般が好きだったんだ。

せん太:生まれついてのアーティスト気質だったんスねえ。美術の活動を本格的に始めるようになったのは?

小野川直樹:高校を卒業して美術の専門学校に入ってからだね。最初はプロダクトデザインを学ぼうと思っていたんだけど、依頼に応えるデザインの仕事よりも、制約のない自分の表現の方がしたくなって、アート系のゼミに入ったんだ。そこはアートに限らず、「作りたいものを作っていいよ」っていうゼミでね。

せん太:アートの道に踏み入れたと!まずはどんな作品を?

小野川直樹:最初は連鶴(一枚の紙に切り込みを入れ、たくさんの折り鶴を作る技法)を使って、折り鶴に出会った幼い頃の自画像を制作したんだ。

せん太:最初から折り鶴とは小野川さん、ブレないッスねえ。その作品に手応えがあった?

小野川直樹:あったと言えばあったんだけど、クオリティーの面で満足できなかったところもあって。そこで卒業制作でもう一度、折り鶴に挑戦しようと思ったんだよね。そうして出来上がったのが、2メートルの柘植の木に、一万羽の折り鶴を葉っぱのように取り付けた作品。

せん太:「鶴の樹」シリーズの原点ッスね!

小野川直樹:そういえば、自画像の作品を作った時に学校で折り鶴のことを話していたら、周りの友人たちは鶴を折れなかったんだよね。それになぜか憤りを感じたんだよね(笑)。

せん太:「折れないのかよ!」と。

小野川直樹:それで「これが折り鶴だ!」という気持ちも込めて卒業制作を作ったんだ。

せん太:そこまでの折り鶴愛が……。

小野川直樹:のめり込みすぎちゃったんだろうねえ(笑)。いまはもうちょっと客観的に向き合ってるけど。

折り紙の文化を継承したい

せん太:卒業制作で作家としての方向性が定まったわけッスか?

小野川直樹:卒業制作の作品は、千代田区の図書館の館長さんに「図書館で展示したい」と声をかけていただいたんだ。周りの評判も良かったし、手応えが感じられたんだよね。それから、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田に有名な一本松があるんだけど、震災後、その一本松をモチーフにした鶴の樹を作って陸前高田の市役所に直接持って行って寄贈したんだ。そのことも作家としてやっていくことを決めたきっかけのひとつだと思う。

せん太:鶴の樹は、やっぱり折り鶴の小ささがポイントッスか?

小野川直樹:そこはこだわっているところのひとつだね。試行錯誤した結果、このサイズに落ち着いたんだ。卓上の木だと、約12ミリ。大きな作品の場合は2センチ程度の鶴にしてバランスを取っているよ。

せん太:折り鶴の量も圧巻ッス!

小野川直樹:最初に制作した時はどれくらい必要かなと考えて、とりあえず100羽折って付けてみたら想像以上に足りなくて、結果的に1万羽になっちゃった(笑)。完成までには、3か月くらいかかったかなあ。卒業制作だから、提出期限に間に合わせるのが大変で……夢の中にも鶴が出て来たよ(笑)。

せん太:鶴まみれの日々ッスね……。

小野川直樹:当初は一日200羽くらいが限度だったんだけど、制作を続けるうちに1日500羽くらい折れるようになったかな。

せん太:折り紙職人としてのスキルがどんどん上がっていったんスね。それでも、制作にはだいぶ時間がかかりそうッス。

小野川直樹:卓上の木の作品で、だいたい1か月くらいかな。

せん太:その工程の内訳は?

小野川直樹:鶴を折る時間がほとんど(笑)。ひたすら無心に折ってるよ。

せん太:なんだか禅の修行みたいッスね……。折り紙のどういうところに魅力を感じられてるんスか?

小野川直樹:紙一枚でできることが一番じゃないかなあ。道具も必要なくて、いつでもどこでも作ることができる。たまに、電車のなかで折ったりすることもあるよ(笑)。それから、コミュニケーションツールになるところも良いなと思ってる。外国の人に折り鶴を見せると、それだけで驚いてくれたり(笑)。

せん太:では、折り紙のなかでも折り鶴に着目したのは何故なんでしょう?

小野川直樹:造形の美しさに惹かれるところもあるし、折り紙のなかでもいちばん身近なモチーフというのも魅力的だよね。それから、日本を象徴するもののひとつでもあるのかなと。

せん太:なるほどなあ。確かに小野川さんの作品からは和の美しさを感じるッス。

小野川直樹:折り紙の発祥地はあきらかになっていないそうだけど、外国でも「ORIGAMI」で通じるみたいだし、日本の伝統文化として認知されているんじゃないかな。いずれは海外でも作品を展示したいと思っているよ。

せん太:世界に広がる折り紙アート!

小野川直樹:遊びで始めた折り鶴が、アートとして認められて展示されたりするのは夢があることだよね。そういう意味で、作品として残るものを作りたいと強く思っているんだ。

せん太:折り紙自体は、ずっと残しておくようなものではないッスもんね。だからこそアートに昇華したいってことッスね。

小野川直樹:それから折り紙が文化として廃れつつあるという不安があって、折り紙を日本の伝統文化として継承していきたい気持ちも持っているよ。最近、けん玉が日本でも海外でも盛り上がっているでしょう。同じような感じで折り紙にも光が当たればいいなって思っているんだ。

せん太:今後のビジョンはありやすか?

小野川直樹:これからも折り鶴にこだわって作品を作っていきたい。鶴の樹の作品は、形を変えながら継続していきたいね。それから、壁にかけられる平面の作品とか、他にもいろいろと考えているよ。

せん太:小野川さん、とっても勉強になったッス。最後に鶴の折り方を教えて欲しいッス!

小野川直樹:……。

小野川直樹さんの折り鶴アートを動画で紹介!

小野川直樹 Profile

1991年、東京都生まれ。
御茶ノ水美術専門学校の2011年度卒業制作展に「鶴の樹」を出品、優秀作品賞を受賞。2013年、「3331千代田芸術祭2013アンデパン・ダンスカラシップ展」にてオーディエンス賞を受賞。折り鶴をモチーフにした作品を発表し続けている。
小野川直樹オフィシャルサイトhttp://naokionogawa.blogspot.jp/

せん太 Profile

田舎から出てきたものの、やりたいことが見つからず、日々自分探しをしているピーターパン男子。今回の連載を通しさまざまなアーティストに会うことで、自分が極めるべき道を見つけたいと思っている。