発掘!アーティスト

未開拓のシーンを切り開くエクストリームなアーティストをご紹介。
案内役は、連載オリジナルキャラクターのせん太くん。

2015.02.19

印刷物をオブジェに変換!?
ユニーク過ぎる消しカスアート

プロフィール

日本各地に存在するさまざまなエクストリーム・アーティストをせん太くんが訪ね歩き、アートの極意を聞き出していく連載シリーズ「発掘!アーティスト」。第17回は現代美術作家の入江早耶さんをご紹介します。入江さんの作品のなかでもとりわけ強いインパクトを放つのが、消しゴムを使ったシリーズ。印刷物や絵画などを消しゴムで消し、その消しカスを素材にして、消した絵のオブジェを制作するという作品なのです。2次元を3次元に――次元を超えた驚きのアートの秘密に、せん太くんが迫ります!

平面を立体にする作品を作りたかった

せん太:今回は入江さんの消しゴムを使ったアートを調査すべく広島市立大学にやって来たッス!う~ん、この弁天さま、本当に消しカスで出来てるんスか?

入江早耶:せん太くんこんにちは。消しゴムの作品シリーズは消しカスだけを素材にして作ってます。何かを混ぜたりはしていないよ。

せん太:消しカスで形を作って、その上に色を塗っているんスか?

入江早耶:着色はしてません。消しゴムをかけると、元の絵の色が消しカスに付着する。それを使っています。絵を消すことで生まれた消しカスが、そのまま作品になる。

せん太:混じりっけ一切なしの消しカスアートかあ、すげーッス!作品はここでつくってるんスか?

入江早耶:大学に研究員として在籍していて、先生のアシスタントをしながら制作をしています。

せん太:入江さんはもともと広島市立大学の学生だったんスよね。大学では何を勉強していたんスか?

入江早耶:デザイン工芸です。プロダクトデザインの専攻で日用品みたいなものを作ってたんだけど、大学院からは現代美術の方に進んで。

せん太:そこで方向転換があったんスね。

入江早耶:学部の時に作ったものも、大量生産の製品に見られる匿名性よりも、自分なりの作品性の方が強く出ているところがあったんです。それから、私が専攻したプロダクトデザインの専攻は、立体的な造形物であれば何を作ってもいいようなところで、その土壌も影響したのかもしれない。

せん太:それで大学院からは現代美術作家の道に入ったわけッスね。

入江早耶:そうなんだけど、消しゴムの作品は学部の卒業制作で作ったものが最初なんです。

せん太:その時点で作家デビューを!早いなあ。消しゴム作品はどういうきっかけで生まれたんスか?

入江早耶:平面のものを立体に再現した作品を作りたいというイメージがまずあって、そのテーマでどういうことができるか考えてたんです。たとえば、絵を描いた紙をクシャクシャに丸めてみるとか。その過程で、消しゴムに思い当たったんです。元の絵の色が消しカスに付着するのがおもしろいと思って。

せん太:テーマがまずあって、生み出されたアイデアなんスね。その卒業制作はどんな作品だったんスか?

入江早耶:当時の千円札に描かれていた夏目漱石と2羽の鶴を消しゴムで消して、立体に仕立てたものです。紙幣の価値を、アート作品という別の価値に変換するというのを狙いました。

せん太:紙幣を扱うって結構アバンギャルドッスねえ!

入江早耶:何を消したら一番インパクトがあるかなと考えたら、紙幣が浮かんで。でも、その卒業制作の作品を、貨幣をテーマにした展覧会へ出品したら日本銀行の方が来て、問題がないか会議にかけられたこともありました(笑)。結果的には大丈夫だったんですけどね。

せん太:その作品に手応えを感じて、消しゴムのシリーズが始まったわけッスね!

入江早耶:最終的に、卒業制作は優秀賞をいただいて、大学に収蔵されたんです。そこから公募展に参加したりする活動が始まりました。ただ、最初から手応えを感じていたわけではなくて、反響をもらえるようになるには結構時間がかかったかな。作家としての契機は2012年の「第六回 資生堂アートエッグ」という展覧会ですね。色々なジャンルの方がたくさん見に来てくださって、おもしろがってもらえたし、大賞をいただくことができました。

ゴミをアートに変換する

せん太:どういう風に作っているのか、具体的な行程を教えて欲しいッス。

入江早耶:まず消しゴムをかける。絵が消えたら、消しカスを集めて練り合わせる。練った消しカスで立体物を作る……ざっくり言うとこんな流れですね。

せん太:絵を消すってなかなか大変なんじゃないスか?消しカスをこねるのも力が要るし、全体的に重労働って感じッス。

入江早耶:やっぱり、丈夫な紙に描かれたものを消すのは骨が折れますね。それから、大きめの作品を作る場合は、消しカスをこねるのにパスタマシーン(製麺機)を使います。

せん太:おもしろいなあ。他にどんな道具を使ってるんスか?

入江早耶:こねる工程に使っているのは、乳棒という理科の実験とかに使うもの。造形には編み物針とか、カッター、シャーペンの先、爪楊枝……いろいろ試してみて、使いやすいものを選んで使っています。

せん太:我流でチョイスした道具なんスね。消しゴムは特別なものなんスか?

入江早耶:全然そんなことなくて、文具屋さんとか100円ショップでも買ってます(笑)。ただ、石油系燃料から出来ている消しゴムと、そうじゃない消しゴムを混ぜるといい感じになるかなあ。とにかく身近なもので作っているということですね。

せん太:どれくらいの制作期間で作りやすか?

入江早耶:大きさや色の数にもよるけど、数日から1週間くらいかな。数をこなすうちにだんだん速くなってきました。

せん太:こだわっているポイントはありやすか?

入江早耶:立体物を、もとの絵にいかに近づけるかにこだわってますね。絵に描かれてない部分は、想像で補いながら造形してます。

せん太:ミニチュアでかわいらしい作品が多いッスよね。一番大きいのは?

入江早耶:最初に紹介した弁天さまの作品。あれは消しゴム20個くらい使ったかなあ。神様を現実の世界に出すというアイデアで作りました。

せん太:この文庫本をモチーフにしたシリーズもおもしろいっすねえ。

入江早耶:これは本棚を展示場所にする展覧会だったので、その場所に合わせた作品を考えて、文庫本がいいかなって。物語の世界から飛び出してくるというイメージですね。

せん太:そういうテーマは常にあるんスか?

入江早耶:消しゴムの作品シリーズには「消しカスというゴミを作品にする」っていうコンセプトが根底にある。だから、作品ごとに必ずテーマが必要なわけではないし、どんな絵でも作品にできるなって思ってます。

せん太:ふつうならゴミになる消しカスがアートに変わるって、おもしろいッスねえ。

入江早耶:それによって、「万物は普遍」という輪廻転生の考え方も表現できるかなって。消しゴムのシリーズとは別に、靴底に恐竜を彫った作品があるんだけど、それも輪廻転生を表現しているんです。靴底に使われている化石燃料って、恐竜とか動物の死骸が蓄積することで、長い年月を経て出来上がったものでしょう。それを再び恐竜に戻す……というイメージで作りました。

せん太:なるほど~深いッス!入江さんは消しゴムシリーズ以外の、別のスタイルの作品も作っているんスねえ。

入江早耶:消しゴムの作品は人気があるので、ずっと作っていくだろうけど、それ以外の作品も手掛けていきたいなと思ってます。

せん太:これから作ってみたい作品はありやすか?

入江早耶:消しゴムでは映画のポスターを使った作品を作ってみたいかな。いろんな色が使えていいんじゃないかなって。それから、これまでは2次元のものを3次元にするという作品を作ってきたけれど、逆に3次元を2次元にする作品ができないかなと考えています。

せん太:おもしろそうだなあ。次元をまたいだ作品、期待していやす!

入江早耶:……せん太くんも次元をまたいだ存在だよね?

せん太:話がややこしくなるのでノーコメントッス!

入江早耶さんの消しカスアートを動画で紹介!

入江早耶 Profile

1983年、岡山生まれ。2007年、広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科卒業。2009年、広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。
主な受賞歴に、2014年「I氏賞」奨励賞、2012年「第六回 資生堂アートエッグ」shiseido art egg賞など。

入江早耶オフィシャルサイトhttp://iriesaya.com/

せん太 Profile

田舎から出てきたものの、やりたいことが見つからず、日々自分探しをしているピーターパン男子。今回の連載を通しさまざまなアーティストに会うことで、自分が極めるべき道を見つけたいと思っている。