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プロフィール

2014.05.08 日本相撲協会業務推進室 加藤里実

力士に「お姫様抱っこ」をしてもらえたり、相撲部屋で朝稽古を見学したり、親方と一緒にちゃんこを食べたり……。今、日本相撲協会によるさまざまなWeb企画が、大相撲ファンの枠を超えて注目を集めています。これらの企画を立ち上げたのが、日本相撲協会業務推進室の加藤里実さんです。TwitterやLINEなどのSNSも駆使し、これまでにない柔軟な発想で相撲の楽しみ方を広げている加藤さんにお話をうかがいました。

相撲を見る「きっかけ」を提供したい

──ユニークなWeb企画は、いつ頃スタートしたのでしょうか。

加藤:私自身は相撲協会に入って8年目になります。元々は管理系の仕事をしていたのですが、2年前に広報部に異動になってからTwitterでの情報発信を担当したり、ホームページでの企画を立ち上げるようになりました。最初に企画したのが、昨年5月の夏場所での振分親方(元・高見盛関)とのハイタッチ会でした。その後は街コンとコラボした「着物コン×大相撲五月場所」や、着物で大相撲を観戦する「和装day」などを手がけました。

──次々に企画を生み出されていますが、どういう経緯で生まれたのか教えてください。

加藤:よく「一生に一度は大相撲観戦をしてみたい」という声は聞くのですが、敷居が高いイメージがあるようで、新規のお客さんになかなか足を運んでもらう機会がなかったんですね。大相撲のお客さんって7割くらいがリピーターなんですけど、初めての方に「きっかけ」を提供したいという思いが大きかったです。また、協会としても、マス席の1万円前後のチケット代を割り引くのではなく、付加価値を付けたいと考えていたんですね。それで、特別な体験ができる企画をやってみようという考えに至りました。

──今年2月の「お姫様抱っこ」企画は大きな話題となりましたね。

加藤:きっかけは、たまたま巡業先で外国人女性が関取にお願いして、お姫様抱っこをしてもらっているのを見たことだったんです。いいなと思ったんですが、実際にやってもらえる機会ってないですよね。それで、幕内の遠藤関と隠岐の海関が女性ファンを抱っこするイベントを考えたんです。参加された方がすごく喜んでくださっただけでなく、テレビの全キー局が取材にくるなど、反響の大きさにも驚きました。


ハイタッチをする振分親方(元・高見盛関)

──今、人気の企画にはどんなものがありますか?

加藤:朝稽古見学付きのチケットが人気ですね。この企画は稽古の様子を間近で見られるだけでなく、記念撮影をしたり、力士や親方と一緒にちゃんこを食べたりできるのですが、そもそもお客さんからの「親方と触れ合いたい」「間近で相撲を見たい」「ちゃんこを食べたい」という要望を受けて実現したんです。

これまでにも九重部屋や春日野部屋にご協力いただいてきて大好評を博してきましたが、今回の夏場所では錣山親方(元・寺尾関)や豊真将関のいる錣山部屋を新しく追加したところ、やはりすぐに完売しました。見学の後には相撲を観戦するので、いい思い出になるのはもちろん、参加された方には「見学した部屋に親しみが湧いて応援したくなる」とおっしゃっていただいています。


インタビューをうける加藤さん

──企画を始めてから客層に変化は現れましたか?

加藤:60歳以上の方が多いのですが、企画に参加される方の年齢層は30代が一番多く、また、その半数以上の方が初めて大相撲を観戦されたというデータも出ています。企画をきっかけにすぐに大きな変化が出るということはないかもしれませんが、人気力士が出てきたり、新たな横綱が誕生したりといった土俵上での盛り上がりとの相乗効果で、少しずつ新しいファンが増えている印象はありますね。また、そうした若い世代の方が、親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんを招待して、大相撲観戦を家族との思い出づくりにご利用いただきたいとも思っています。

ひとつのツイートが大反響を呼んだ「お姫様抱っこ」企画

──Twitterをはじめ、SNSも積極的に活用されていますね。

加藤:Twitterも、当初は番付発表など、テキストベースでの情報しか発信していませんでした。というのも、それまでは力士の写真を撮るのは報道カメラマンの仕事で、相撲協会の人間がわざわざやることではないという認識があったんですね。でも、今までと同じことをしても意味がないと思い、私が担当するようになってからは、相撲部屋での様子や健康診断など、いろいろなところに取材に行って写真を撮り、ツイートするようにしたんです。

──LINEで紹介されている、素顔の力士も魅力的ですね。

加藤:LINEでは力士のパーソナルな魅力を伝えたくて、好きな動物とかも合わせて紹介しています。力士としての表情は、土俵上や取組後のインタビューで十分伝わっていると思うので、それとは違う表情をお見せできたらと思っています。相撲協会には力士が600人いますが、メディアに出られるのは関取だけなので、SNSでは幕下以下の力士や行司さんなどの裏方もご紹介して、「この人カッコいいな」「おもしろい仕事があるんだな」と興味を持ったり、親しみを感じてもらえたらと思っています。

──SNSではダイレクトな反応もあるのでは?

加藤:「お姫様抱っこ」の企画では、リツイートすることで応募できるようにしたところ、フォロワーが一気に5,000人以上増えたんです。たったひとつのツイートから情報が広がり、メディアを巻き込んでの大反響になって、改めてTwitterの可能性を感じました。また、相撲ファンでなくても「おもしろそう」とフォローしてくれている方もいて、なかにはTwitterがきっかけで本場所を見に来てくれた方もいたんですよ。SNSは、ファンに直接アプローチできるすごくいいツールです。これからもっと影響力を増すと思うので、まだまだできることはあるんじゃないかなと思っています。


公式Twitterのフォロワー数3万人突破を記念して今年2月に開催。
8,000人を超える応募者の中から当選した6人が、夢の「お姫様抱っこ」を楽しみました。

世界にひとつしかない「大相撲」の魅力を伝えたい

──新しい試みも多いですが、どのように親方や力士のみなさんを巻き込み、プロジェクトを動かしているのでしょうか?

加藤:説得材料になる詳細なデータを必ず示すようにしています。企画のほとんどは個人的な思いつきではなく、お客様からいただいたアンケート結果に基づいて立案しているため、役員会議でもファンの方からのニーズがあることをまず説明しています。また、企画を始めてから平日のマス席の売上げが倍に伸びているので、そうした実績を数字として示すことで上司や親方に理解してもらっています。

ほかにはTPOをわきまえることでしょうか。本場所中の企画に関しては、土俵に集中してもらえるように力士への参加はお願いしていません。彼らにとっては、いかに白星をあげていくかがすべてとなりますから。ですので、場所中は親方にご協力いただくように配慮しています。あと、企画を通す大きなポイントとしては、役員の前でも物怖じしないことですかね(笑)。

──今後やってみたいことはありますか?

加藤:運動会をやりたいですね。ファンの方にも参加していただいて、力士と一緒に大玉転がしをしたり、二人三脚をしたり。ぜったい楽しいと思います(笑)。あとはファンの方同士が交流できるような場所を作りたいんです。例えば、琴欧洲親方を囲んだ女子会とかも、親方の可愛らしさが引き出されておもしろいんじゃないかなと思っています。私の仕事は、力士とファンをつなぐこと。今はインターネットを利用した企画が中心ですが、これからはファン、力士、親方が直接会って何かをやるような企画を実現できたらと思っています。

大相撲五月場所

日程:2014年5月11日(日)~25日(日)
場所:両国国技館
URL:http://www.sumo.or.jp/






お問い合わせ
チケット大相撲
ネット予約:http://sumo.pia.jp/vacant/va05.jsp
電話予約:0570-02-9310(営業時間:10:00~18:00)
※日程、座席によっては完売しているチケットもございますのでご了承ください。

取材を振り返って

「実は、協会に入るまでは大相撲に興味がなかったんです」という加藤さん。しかし、「一度は観戦してみたい」と思っている潜在的相撲ファンの背中を押してくれる企画の数々は、ビギナーとして、女性として、土俵の外から大相撲を見てきた加藤さんだから実現できたのでしょう。迷いのない語り口からは、広報ウーマンとしての手腕と揺るぎなき相撲愛が伝わってきました。スポーツであり、文化でもあり、さまざまな可能性を秘めた大相撲の世界。未体験の方は、五月場所の開催を控えたこの機会にぜひ「きっかけ」を見つけて、その扉を開いてみませんか?

公益財団法人日本相撲協会 Profile

大正14年(1925年)12月の発足後、本場所および巡業の開催、相撲道の伝統と秩序を維持するために必要な人材の育成、青少年や学生等に対する相撲道の指導普及などの事業を展開。現在本場所は1年間に6回(一月場所、三月場所、五月場所、七月場所、九月場所、十一月場所)挙行されている。
http://www.sumo.or.jp/
https://twitter.com/sumokyokai