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プロフィール

2014.06.26 プラスヘッズ

アメリカ郊外っぽい架空の街を舞台に、ひとクセもふたクセもあるキャラクターたちが繰り広げるコミカルなやり取りで一躍人気を集めたアニメーション『The World of GOLDEN EGGS(以下、ゴールデンエッグス)』。その誕生から10年を経て、『ゴールデンエッグス』を生み出した「プラスヘッズ」が新たな作品の制作にとりかかっています。制作・監督を務めたプラスヘッズ代表の臺佳彦(だい・よしひこ)さんに、今振り返る『ゴールデンエッグス』のこと、新作のこと、そして、ものづくりへの思いについてお話をうかがいました。

制作も戦略もリスクもすべて引き受けた
『ゴールデンエッグス』

──『ゴールデンエッグス』のスタートから10年。そもそもどのような経緯でこの作品は生まれたのでしょう?

臺:もともと僕は旭通信社(現アサツーディ・ケイ)という代理店で、車やタバコなどのCMプランナーをしていたんですね。その頃から後半数年は演出もしていて、フリーになってからは、とにかく楽しいことならなんでも挑戦していました。「プラスヘッズ」を立ち上げてからは、ゲーム関連の仕事、たとえば『ドラゴンクエスト』の世界観を実写で表現したCMなどを制作してきました。ただ、ずっと広告の仕事をしているうちに、CM作品ではないものを作りたくなってきたんです。そうして、いろんなアイデアや人との出会いからできたのが、『ゴールデンエッグス』でした。これはクライアントがいないコンテンツなので、制作もメディア戦略も全部自分たち仕切り。そのかわり、出資も含めてリスクは100%負う。そういう方針で作ったものなんです。


今年で10周年を迎える『ゴールデンエッグス』。オフィシャルサイトでは100アイテムものグッズが購入できる。(左)劇中に登場した英語フレーズを復習できる「The World of GOLDEN EGGSのNORI NORI ENGLISH」(宝島社刊)(右)

──新しいのにどこか懐かしい、今までに見たことのないような作風が新鮮でした。

臺:ちょうど『ゴールデンエッグス』を企画した頃、仕事で最先端のCGとかをたくさん見てたんですね。でも僕はへそ曲がりなんで、よくできたものを見るとそうじゃない表現がしたくなる。それで、技術的にはCGだけど、見た目はアナログの2Dっぽいアニメーションに一時期ハマり、ふざけて「2.5D」なんて呼んでいました。その延長線上に『ゴールデンエッグス』もあったんです。

──CM、本、イベントとさまざまなメディアに広がっていきました。

臺:うちの場合、企画したコンテンツのブランディング──僕はよく「さわり方」という言い方をするんですが──を、全部自分たちでプロデュースするんです。それで、渋谷PARCOとのコラボでは全館と公園通りを『ゴールデンエッグス』でジャックしたり、東北楽天ゴールデンイーグルスとのコラボでは「ゴールデンエッグスナイター」をしたりしました。ローソンと一緒に商品を作ったときは試作品の味見もしたし、コーナーから派生した料理本(「The World of GOLDEN EGGS MORI MORI COOKING」(PLUShead刊))や英語本を出したときも編集は自分たちでやりましたね。

──メディア戦略は、プロジェクトの立案当初から考えていたのでしょうか?

臺:テレビアニメについては、先に地上波で流すと、どうしても局にしばられてしまうので、CSのアニメチャンネルと音楽チャンネルの両方でオンエアしてもらいました。なので後に人気が出たとき、ノートパソコンや日産の「NOTE」の広告キャラクターとして広がったり、局に関係なくいろんな番組で紹介してもらえたりしたんです。『ゴールデンエッグス』は音楽から好きになる人もいれば、キャラクターから好きになる人もいるし、ローソンや野球から好きになる人もいます。僕がすることは、その「さわり方」をできるだけたくさん作ってあげることだと思っているんです。もちろん、今はメディアの状況が一変しているので、同じ手法は成立しないと思いますが、あの頃はそれができたんですよね。

嫌われる覚悟でうるさく言わないと、作品は守れない

──新作『大人のアニメ The Planet of Stray Cats(以下、ストレイキャッツ)』はどのような作品なのでしょう?

臺:もともとは、会社のスタッフと箱庭みたいなセットを作って、人形を動かして遊んでいて、それが進化してできたのが、映画『Present For You』と2D&3Dアニメ『ストレイキャッツ』でした。『ストレイキャッツ』はお金や時間のかかる映画とは別に、機動力があるものもやりたくてはじめたものなので、省略できるところは全部省略してるんです。主要キャラクター以外は黒いし、舞台は空中に浮かんでいて背景がないし、ボイスアクターもモニカが一人で全役をしてますからね。そんな超シンプルな脱力系アニメが、たとえば大作映画がはじまる前の巨大スクリーンに出てきたら、おもしろいんじゃないかと思っています。そして、大人が何度もみたくなるアニメもあるといいなって。


インタビューを受ける臺さん(左)、オフィスには作品のグッズも飾られています。(右)

──いつ頃、公開されるのですか?

臺:今、6割くらいできていて、キャラクターグッズの販売もはじめましたが、公開についてはまだ検討中です。僕らが作品を作るときは、100%自分たちでリスクを負った状態で、コンテンツを先に作ってしまうんです。『ゴールデンエッグス』も映画もそう。できあがってから、「これをどうしようか」って考える。なぜかというと、見せなきゃわかんないから。明快でしょう?ただ同業者には、「こんな無謀な人、見たことない」っていわれますけどね。

──たしかに、企画書から制作が動き出すケースのほうが一般的のように思います。

臺:今、コンテンツを作るのって、なかなか難しいと思います。いろんな人が関わると、真ん中の安全な芯を選んでいくことになり、結果的に似たものになってしまう。僕もそうだったけど、代理店の人間ってクライアントの意向を先回りして「こういうのはやめてください」とか言うでしょ。それは、お金を出してないんだからしょうがないんです。そこで、誰かが嫌われる覚悟でうるさく言わないと、作品は守れない。そう考えると、自分たちで作ってから売るのって、ものづくりとして自然な形だと思うんですよね。


「The Planet of Stray Cats」のトレイラー映像

CG、クレイ、実写。使える道具で、新しいものを作りたい

──映画『Present For You』で、アニメーションと実写という表現を選ばれたのはなぜですか?

臺:僕の場合、自分が作りたいものを、そのとき使える道具と材料で作るだけで、その表現方法がCGでもクレイアニメーションでもかまわないんですよ。とにかく、人と違うことがしたい。それで『Present For You』では、俳優が演じる実写映像と、パペットによるクレイアニメーション映像が交錯する3D(立体視)映像にしました。僕は代理店時代によく新橋や有楽町で飲んでいたんですが、今、再開発で路地がどんどんなくなっているのが寂しくて、あの街を舞台にした物語を作りたいと思いました。クレイは、以前英国ブリストルのスタッフと制作したCMで使ったときに魅了されてしまいました。お金も時間もかかる手法だけど、面白いものを作るには無謀でも誰かがやらなければと思ったんです。そういうお話を俳優のみなさんにしたところ、当初からイメージして脚本を書いていた主演のオダギリジョーさんをはじめ、僕が出てほしいと思った方全員に出ていただけることになりました。


「Present For You」のトレイラー映像

──クレイアニメという大変な手法をあえて選ばれたのはなぜですか?

臺:ここまで大変だと思わなかった、というのが正直なところですが、日本にもこんな感じのクレイアニメがあるほうがいいと勝手に思っただけです。クレイの撮影では1秒間の動きを24分割して、手を動かし、口やまぶたを変えて、一回シャッターを押してまた動かすんですね。だから1日に3~5秒分しか撮れないんですよ。ですので、とてつもなく時間がかかるんです。そのほかにも専用のスタジオを作るのに2年、人形やセットを作るのに2年など、それぞれに作業を重ね、途中に震災もあり、結果5年もかかってしまったんです。

◯Present For Youのメイキング映像がYouTube PLUSheadsオフィシャルチャンネルとニコニコ動画PLUSheadsチャンネルで公開されています。ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=9XXd2BjJWoU
http://www.nicovideo.jp/watch/1403078624

◯『Present For You』上映&臺さんのトークや質疑応答
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻公開講座「オープンイノベーション2014」
OPEN INNOVATION 2014
9月6日(土) 開演15:00(開場14:30) 終了予定18:00

お問い合わせ
東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻
TEL:045-227-6041(平日10:00~17:00 開催前日まで)
TEL:050-5525-2676(開催当日のみ。講演2時間前から終了時間まで)
主催:東京藝術大学大学院映像研究科
共催:横浜市文化観光局

取材を振り返って

制作に5年をかけた映画『Present For You』が、今年1月にアメリカで開催された国際3D協会の「3D Creative Arts Awards」を受賞。今の心境をうかがうと「長かったからねえ。眠れない日もいっぱいあったし。ただうちの場合、作ってからのほうが長いので。これからです」と、噛みしめるように語った臺さん。今まで見たことのないものを作るために、すべてを引き受け、できたもので勝負する。リスクの分散化が進むコンテンツ産業において、過酷にも思えるそのスタイルにこそ、新しく刺激的な何かが生まれる土壌があるように思いました。

PLUS heads inc.  Profile

広告代理店にてCMプランニングを手掛けてきた臺佳彦が、フ リーランスを経て2001年に設立。2004年に発表されたCGアニメーション「The World of GOLDEN EGGS」は、テレビアニメ、DVD、ゲーム、書籍、リアルイベントとさまざまなメディアを巻き込んで大ブームとなった。現在は2D&3Dアニメー ション「大人のアニメ The Planet of Stray Cats」、人形と人間のWキャストによる映画「Present For You」が完成。いずれも正式公開が待たれている。
http://www.plusheads.com/