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プロフィール

2014.07.10 MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト

戦後の日本の新しい住まいとして登場し、1950年以降またたく間に全国に広がった「団地」。この団地の良さを残しつつ、現代の暮らしに合わせて再生する試みが、UR都市機構(以下、UR)と無印良品のタッグにより2012年にスタートしました。それが「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」です。今年賃貸募集した高島平団地では、平均倍率7倍もの人気を集めたこのプロジェクト。そもそも無印良品は、なぜ団地を手がけることになったのか?住空間事業を手がける株式会社MUJI HOUSE取締役の川内浩司さんにお話をうかがいました。

URと無印良品は、共通点が多いんです

──「無印良品の家」という注文住宅の事業は10年前にスタートされたんですよね。

川内:はい。無印良品の家づくりは、MUJI.netというサイトで、ユーザーとコミュニケーションしながら商品開発をするという企画から生まれたものでした。無印良品が扱うアイテムにはボールペンがあり、ボールペンを入れるペンケースがあり、ペンケースを入れるPPケースがあり、PPケースを入れる収納家具がある。それなら、収納家具を入れる器としての「家」もつくったら、無印良品の世界観がコンプリートするのでは、と。そんな発想から2004年に最初の「木の家」をつくり、今年3月には住空間事業を専門とした会社「MUJI HOUSE」を立ち上げて、4月に4作目となる「縦の家」を発売しました。当初から、無印良品では「家はただの箱でいい」と考えてきました。たとえば子ども部屋をつくっても、子どもが成長し、独立して家を離れたら使わなくなりますよね。最初から間取りをつくり込んでしまうのではなく、大きな空間をつくって自由に仕切れるようにしたら、暮らしの変化に対応できる、長く使える家になる。そのために構造的に強く、高い断熱性能や耐震性能を備えた、しっかりした箱をつくろうと考えたんです。

──URと組まれることになったのはなぜですか?

川内:実はURと無印良品の家は、ムダなデザインをしない、合理的であるなど、コンセプトが大変近いんです。URの建物は、南と北に窓がついていて、風が抜けるようになってるんですね。というのも、まだエアコンが普及していなかった当時でも、冬は日の光で部屋をあたためて、夏は風が抜けて涼しくすごせるよう計画されていたんです。これは、日本の暮らしの知恵を踏襲し、光を取り入れて風が通るように設計した無印良品の「木の家」とも共通しています。このようにとても親和性が高かったことから、すぐに意気投合して、プロジェクトがスタートしました。


インタビューを受ける川内さん(左)
両側から光と風が差し込む室内。ダイニングとリビング、どちらにいても心地良い。(右)

新しいスタンダードとなる暮らしを提案したい

──MUJI×URは、団地とは思えない自由度の高い間取りが魅力的です。

川内:日本の住宅のスタンダードとなる「nLDK」という考え方を生み出したのは、URの前身である日本住宅公団でした。それまでの日本の家は、一部屋の中で寝るときは布団を敷いて、食事のときはちゃぶ台を出すというスタイルだったんです。ところが戦後、経済が発展し生活が豊かになると、欧米のように、ダイニングと寝室を分ける寝食分離の生活スタイルが求められるようになりました。そこでURは、50~60平米の空間に2DKや3DKのプランをつくり、多くの人がその合理的でコンパクトな家に住むことをモチベーションにがんばってきたんです。 ただ、4畳半や6畳といった間取りは、残念ながら現代の暮らしにフィットしなくなってしまった。そこで、小さく仕切られた部屋を、現代のニーズに合うようにつくり直しました。無印良品の「家はただの箱でいい」という考え方を、URとのコラボレーションを通じて広げ、新しいスタンダードとなる暮らしを提案したいと思ったんです。

──「買う」住まいから、「借りる」住まいに着目されたのはなぜですか?

川内:昔から、「借りるほうが得か、買うほうが得か」という議論はありますが、だいたい「買ったほうが資産として残るから得だ」という結論になるんですよね。でも、たとえば30代の夫婦が、将来子どもが何人できてもいいようにと広い家を買ったら、まだ子どもがいないうちからその分のローンを払わないといけなくなる。それが賃貸なら、2人なら40平米、4人になったら60平米というふうに、そのときの暮らしに一番フィットする部屋を選べるんです。ただデメリットは、賃貸だから自分たちの好きなようにできない。そこを私たちは、URと一緒に変えたいと思いまして。


元々押し入れだったスペースは書斎コーナーとして有効活用。(左)
、壁を動かし宙に浮いたように残したコンセント。(右)

──賃貸のイメージを変える、ということですか?

川内:そうです。リノベーションというと「すべて壊して新品のようにする」というイメージがありますが、MUJI×URでは「壊しすぎず、作りすぎない」ことを基本コンセプトとしました。コストを抑えるためにも、なるべく使えるものは使い、古いイメージを残すようにしています。たとえば、最初に手がけた大阪の「リバーサイドしろきた団地」では、柱や鴨居などの古い木材をそのまま残したり、押入の襖を外して空っぽの空間にしたりしました。壁を動かしたあと、コンセントだけを宙に浮いたように残したところもあります(笑)。それと同時に、フリースペースを多くとり、収納家具を置けば収納になるし、机を置けば書斎になるというふうに、生活スタイルに合わせて、自分たちで編集ができる余地を残すようにしました。そうした新築にはない温かみと自由度の高い住まいにすることで、借りて住むことの賢さが見直されたらと考えたんです。

都市の住まいの理想を叶えた「団地」

──入居者には、どのような方が多いのでしょうか?

川内:MUJI×URの物件は50~60平米のプランが中心ということもあって、子どものいない30代夫婦が一番多いですね。URのサイトで入居者インタビューが紹介されているのですが、それを見ると、みなさんすごくカッコよく住んでいらっしゃいます。高度成長時代には、一国一城の主になることが最終目標のようなところがありました。そうした「いかに豪華な家を買うか」というモチベーションが、今は「いかに賢い選択をするか」という考え方に変わってきているのでしょう。これまで賃貸というと「買えないから借りる」という消極的なイメージがありましたが、そうではなく、積極的に「借りる」ことを選択している。すでにMUJI×URに住んでいる方々は、そういう選択をされた方たちだと思います。

──団地ならではの魅力とは、どんなところにあると思われますか?

川内:無印良品で団地についてのアンケートをとったところ、9割の方は、住んでいたり遊びに行ったりと団地に何らかの形で思い出があり、親しみを感じていることがわかりました。UR賃貸住宅は贅沢な敷地条件に建てられていることが多く、子どもが遊べる広場があり、40~50年を経て樹木も成長し、公園としても素晴らしい環境になっています。それってもう日本の住宅の原風景ともいえるんですよね。また、塗装や配管などのメンテナンスがきちんとされていて、比較的利便性の高いところにあるなど、団地は今、都市の住まいとして理想的な条件を備えている。MUJI×URのオフィシャルサイトではUR賃貸の魅力とともに現在の取り組みも紹介し、認知度を広げることにも力を入れていきたくて。そうして「UR賃貸っていいね」という思いを、「住んでみたい」という思いにつなげていきたいと思っています。

取材を振り返って

「団地」を無印良品がリノベーションする。このプロジェクトは、ただ部屋を無印良品の家具でコーディネートするわけではなく、「建築家たちが知恵を絞りつくった建物や環境を受け継ぎ、自分にあった住まいを自分らしく編集して住む」という、合理的かつ積極的な暮らしの提案であることが、お話をうかがってわかりました。若い人にも団地が住まいの選択肢に加われば、今では老人が多く暮らす団地に、再び子どもたちの声が戻る日もくるかもしれません。また、近所に残る団地の豊かな緑を残したいと思っている人も少なくないでしょう。そう考えるとMUJI×URの未来は、個人の暮らし方だけでなく、日本の住環境の未来にもつながるように思いました。

MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト Profile

株式会社MUJI HOUSEとUR都市機構が「もう一度、現代の暮らしのスタンダードを考える」ことをテーマにコラボレートし、築40~50年の団地をリノベーションした新たな住まいを提供するプロジェクト。大阪府内の3団地、「リバーサイドしろきた」(大阪市都島区)、「泉北茶山台二丁団地」(堺市南区)、「新千里西町団地」(豊中市)からスタートし、第3期募集では都内最大級の団地として知られる東京都板橋区の「高島平団地」の物件も提供。今後も新しく出た空き部屋や、全国のUR物件にエリアを拡大してリノベーションを実施していく予定。
http://www.muji.net/ie/lifestyle/danchi/