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プロフィール

2014.08.13 DDTプロレスリング 高木三四郎

1997年にインディー団体として旗揚げ後、エンターテインメント性の高い興行が話題を呼び、両国国技館や日本武道館大会が大成功。今年4月からは地上波でのレギュラー放送もスタートするなど、業界内外から熱い注目を集めているのがDDTプロレスリング(以下、DDT)です。DDTならではの自由な発想はどのように生まれたのか、またその経営戦略とは? DDT代表取締役で、現役レスラーでもある「大社長」こと高木三四郎さんにお話をうかがいました。

通りすがりの人にも、プロレスを観てもらいたい

──特殊なルールの試合をしたり、リングのない場所で闘う「路上プロレス」など、ファンの間では個性的な興行で知られています。

高木:僕らの中で変わったことをしているという認識は……もちろん、あるんですけどね(笑)。真剣勝負の最中でも、曲が流れると絶対に選手が踊らなくちゃいけない「ロックンロールデスマッチ」とか、途中でバットをおでこにつけてグルグル回らないといけない「くるくるバットデスマッチ」などがあります。そして、路上プロレスのきっかけは、些細なことだったんです。2008年に自伝「俺たち文化系プロレスDDT」を出版したんですが、よくタレントさんって本を出したら書店で握手会をするじゃないですか。その感覚で出版社さんに「本屋さんでプロレスできませんか?」と提案してみたら、本当に協力してくれる書店を探すことができたのです。これはもう、やるしかない(笑)。不安はありましたけど、いざやってみたらたくさん集まってくれて、中にはたまたま通りかかっただけなのに面白がって最後まで観てくれた人もいたんですよね。よく考えたら、試合を観てもらうのって日程や会場を調べたりチケットを買ったりと、初めての人にはハードルが高いじゃないですか。でも路上プロレスなら、どんな人にも観てもらえるチャンスがありますよね。今までにキャンプ場や商店街、工場、浅草の花やしきなど、いろいろなところでやりましたよ。

──なぜ、このようなユニークな企画が生まれたのでしょう?

高木:いわゆるプロレス団体といってみなさんが思い浮かぶのは、新日本プロレス、全日本プロレス、ノアといったメジャー団体でしょう。なかでも新日さんや全日さんは40年以上もやっている王道の中の王道。正面から勝負したところで、その歴史には勝てません。そうした団体と差異化をはかるには、どうしたらいいかと考えました。それで僕らは、アメリカのプロレス団体WWEのエンターテインメント路線を取り入れようと思ったんです。例えば、当時WWEには「ハードコア王座」というのがあって、これは24時間365日いつでもどこでも防衛戦が行われるという趣向のものです。観客席とか道端でいきなりタイトルマッチがはじまったり、王者がたった数秒で入れ替わったり、女性が王者になったりと、エンターテインメント色がかなり強かったんですよね。僕たちはこれに着想を得て時間や場所、試合形式を問わずいつでも挑戦できる「アイアンマンヘビーメタル級王座」を始めました。バックステージの映像を流していることもWWEの影響ですね。


2014年6月に松山の大街道商店街で行われた商店街プロレスの様子

アイデアの元は、子どもの頃に見たバラエティ番組

──これまでのプロレス団体にはない新しい試みの連続だったと思うのですが、反応はいかがでしたか?

高木:よかったですよ。もちろん、真剣勝負を求める人たちからは眉をひそめられたりもしましたが、やり続けてるうちに慣れちゃったのか、もしくは客層が入れ替わったのか、受け入れてもらえるようになりました。また新しいファン、特に女性ファンの集客にも成功しました。DDTを知って「こんなに楽しいプロレスがあるんだ」と気軽に観てくれるようになったという女性も多かったです。これは誤解されやすいところなんですが、僕らはちゃんとした正統派の試合もしています。ただ、食わず嫌いだったり、気にはなるけどなかなか踏み出せずにいる人にとっては、楽しい試合がプロレスに興味を持ってもらえるきっかけになるので、エンタメ色の強い試合を大事にしているんです。

──ユニークな企画の数々に驚かされますが、高木さんのアイデアの源泉とは?

高木:子どもの頃に見てたバラエティ番組ですね。もともと僕は、ザ・ドリフターズや「オレたちひょうきん族」、とんねるずさんやダウンタウンさんの番組が大好きなので、その影響が一番大きいと思います。去年の両国国技館2daysの初日も、バラエティ番組を意識して、芸人さんやタレントさんとのコラボ企画を打ち出しました。テレビ番組の司会をプロレスのリングでも導入できないかなと思い、南海キャンディーズの山里亮太さんに総合司会として進行してもらったんです。

──両国2daysでは、アイドルとのコラボレーションもありました。

高木:単純に僕が好きというのもあるんですけどね(笑)。これは持論なんですが、いわゆるプロレスファンとアイドルファンは気質が似ているんです。あとラーメンファンも。まだ世に出てないものを発掘して、好んで応援するところとか親和性が高いですよね。それで、両国大会ではライブ等を中心に活動する3組のライブアイドルに出てもらいました。それも、ただ歌ってもらうだけではおもしろくないし、かと言って試合をしてもらうわけにもいかないので、それぞれのアイドルのファンを公言するレスラー同士が戦い、アイドルは応援したり、自分のファン以外のレスラーを公認凶器で攻撃する「アイドルランバージャック4WAYマッチ」にしました。さらにそこに、僕が推しているレジェンドアイドルとして新田恵利さんが登場する。プロレス界ではレジェンドレスラーである長州力のパワーホールには誰もかなわないように、現役アイドルもいいけど、やっぱり新田恵利さんの「冬のオペラグラス」にはかなわないものがある。この4組の闘いは、プロレスらしい出し物になったと思っています。


インタビューを受ける高木さん(左)、2013年8月に行われた両国大会での試合の模様。新田恵利さんが「冬のオペラグラス」を熱唱している(右)

写真提供:DDTプロレスリング

もう一度プロレスを、国民的なものにしたい

──1997年に団体を立ち上げ、2006年には社長に就任。経営者として、どんなことを心がけているのでしょう?

高木:社長就任前から経営には携わっていたのですが、とにかく「プロレスだけで食っていける環境を作りたい」という思いがありました。とはいえ正直、プロレスだけでは難しい。それで、プロレスから派生するものとして選手もスタッフとして働く飲食店やストレッチ専門店の経営も手がけています。実は2008年のリーマンショックの時にうちも大幅なマイナス収支が出て、これがあと1年続いたら倒産という状況でした。どういう手を打つべきか迷った結果、業態を縮小するのではなく、あえて勝負をかけようと翌年の両国国技館進出を発表したんです。当時、後楽園ホールには毎月1,000人を集めていましたが、両国は1万人規模。これを埋められないと団体として終わる、まさに背水の陣でした。蓋を開けてみたら札止めになるほど来ていただいて、持ち直すことができたんです。この成功を受けて、この先5年間は大会場の興行収益で会社をまわしていこうと戦略を立てました。それから今年でちょうど5年が経ちましたが、今まで以上にプロレスやDDTという言葉を世間に広めていかなければと思っています。

──プロレスやDDTの名をメディアに広げていくことで、目指していることとは?

高木:最終的には、もう一度プロレスを国民的でメジャーなものにしていきたいと思っているんです。スポーツや格闘技というカテゴリーでなく、バラエティだっていい。「プロレス」という言葉を、再び誰にでも親しみのあるものにしていきたくて。プロレスって、人々を元気づけられるものだと思うんですよね。勝負がついても、敗者は再び這い上がれる。そのドラマに共感して、「よし、明日からがんばろう」と勇気をもらえるんです。戦後の沈滞ムードを一気に吹き飛ばしたのは力道山を筆頭とするプロレスでした。僕がリーマンショックのあとに両国大会を決断したのも、不況だからこそ大きな目標に向かっていく姿を演出したいという思いがあったからです。プロレスって、そんなふうに夢を見られる、勇気づけられるジャンルだと僕は思っています。

両国ピーターパン2014~人生変えちゃう夏かもね!~

日程:8月17日(日)
場所:両国国技館
開場/開演:12:30/14:00
場所:両国国技館
お問い合わせ:03-5360-6653
チケットはチケットぴあ、イープラスで販売中
※すでに完売している券種もございますのでご了承ください。

取材を振り返って

「商店街プロレス」では、ヤカンやビニール傘など商店街で買ったものを公認凶器として使えるルールを試合開始30分前に急遽決めてみたり。常識にとらわれない発想と企画力、強いリーダーシップでDDTを牽引し、プロレス業界に新風を吹き込んできた高木さん。プロレスという概念の枠を広げ、プロレスが本来持つ「楽しさ」に気付かせてくれるDDT流のスタイル、そしてプロレス同様にドラマのある経営理念にも、DDTが愛される理由が隠れているように思いました。

DDTプロレスリング Profile

1997年に設立されたインディープロレス団体。リング以外での興行、個性豊かな選手、アイドルやタレントの参戦など、既存のプロレス団体とはまったく異なるオリジナリティに溢れた活動で多くのファンからの支持を集めている。団体名DDTとは「Dramatic Dream Team」の略。
http://www.ddtpro.com/