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プロフィール

2014.08.28 CASA PROJECT HOUKO

不用になった傘の素材を利用分解し、パッチワークのように布をつなぎ合わせ、キュートなプロダクトや胸躍るようなカラフルな空間に生まれ変わらせる。そんな「CASA PROJECT」を学生時代に立ち上げ、インスタレーション(※展示作品)やワークショップなどの活動を展開してきたのが、プロジェクト代表のHOUKOさんです。傘が「遺失物No.1」といわれ、その手軽さゆえに使い捨てられることも多い昨今。傘という素材の魅力に着目したHOUKOさんに、このプロジェクトに込めた思いについて、お話をうかがいました。

傘なら、たくさんの色を使えると思ったんです

──プロジェクトを立ち上げたきっかけから教えていただけますか。

HOUKO:滋賀県立大学生活デザイン専攻在学中に、リサイクルをテーマに「空間をつくる」という課題があり、そこで傘の布をつなげたら、楽しいものができるんじゃないかと思いついたのが始まりです。「絶対これはおもしろいものになる」と確信して、まず部屋に吊るす蚊帳をイメージした小さなテント「かさのいえ」をつくりました。公園に設置してみたら、いつのまにか子どもたちが集まってきてくれて、これまでは大学内で模型をつくったり図面を引いたりということばかりだったので、実際につくったものに反応があったことがすごくうれしかったんです。それから8年。思いがけず長いプロジェクトになって、大学時代の先生からも「まだやってんの?」って驚かれていると思います(笑)。

──なぜ、「傘」を選ばれたのでしょう?

HOUKO:リサイクルできるものを考えると、まず段ボールや新聞といった色のないものを思いついたのですが、傘だったらいろんな色や柄を使えるなと思いました。あと、通っていた大学が琵琶湖からの強い風を受ける立地だったせいか、壊れて捨てられた傘がたくさんあったんですよね。それも頭の隅にあったんだと思います。よく男性に、「傘って黒と紺とビニールだけだと思ってた」と驚かれるんですが、私自身も意識的に集めるようになってから、傘には色やデザインのバリエーションが多いことに気付きました。古いものは柄もモダンで、昔の生地ほど破れにくかったりします。あと大学には、女の子が使うかわいい柄のものがたくさんありました。カラフルな色の傘は、太陽に透けたときの光の感じがおもしろいんです。雨の日は憂うつというイメージがあるから、楽しい気分にするためにいろんなデザインの傘が生まれたとも聞きました。


CASAプロジェクトはじまりの作品「かさのいえ」(左)、不用になった傘から集められた材料。ビニール傘は持ち運びのケースや、作品を発送するときのパッケージとして再利用している(右)

三角のパーツを活かして「傘らしさ」を表しています

──ショッピングバッグ、テトラポーチなどデザインも個性的でかわいいですね。

HOUKO:元が傘だったことをなんとなくわかってもらえるようにデザインしています。傘は三角の布の組み合わせでできているので、その三角形をできるだけ崩さずに使うことで、傘らしさを残したいな、と……。たとえばショッピングバッグも、三角のパーツをそのままつなぎ合わせてつくっています。自転車カバーなど大きいものは、図面を描いたあと、十分の一の模型をつくって作業しています。こういうつくり方は、私が服飾ではなく建築学科出身だからかもしれませんね。

──材料としての傘の魅力とは?

HOUKO:まずは、耐水性があること。あと、軽いのにすごく強い。高密度の繊維でできているので、普通の布と違って切りっぱなしでもほつれないから扱いやすいです。ビニール傘は、パーツを入れて持ち運ぶケースにしたり、作品を発送するときのパッケージとして再利用しています。傘を分解すると、1本から布や骨、ネームバンドなどに分類できるのですが、先端についている小さなパーツにも「露先(つゆさき)」という名前がついていたりするんですね。そういう細かいことを知ることができるのも、このプロジェクトのおもしろさだと思っています。


材料となるネームベルト(左)、露先(右)。それぞれ色や形のバリエーションが豊富にそろっている

──HOUKOさんの作品は、色合わせや柄合わせの鮮やかさも大きな魅力です。

HOUKO:私は小さい頃から色合わせを考えるのが大好きだったので、そこは自分でも一番楽しんでいるところなんです。CASA PROJECTでは材料を買ってくるのではなく、たまたま同じタイミングで手に入ったものを使っているので、思いもよらない配色や柄合わせを見つけられたりします。だからいつも新鮮で、ずっと楽しんでいられるんです。今は個人でやっていますが、もしビジネス化して利益を追求するようになると、量産体制を敷かなければならず、「黄色い傘が何本必要」みたいな感じで必要な分を一度に仕入れないといけなくなりますよね。それは「不用な傘を新しく生まれ変わらせる」というコンセプトからずれてしまうので、コンセプトを理解していただけるお店にだけ卸す、という今のスタイルに落ち着きました。


CASA PROJECTの作品。三角のパーツが活かされたデザインになっている。

捨てられる傘がなくなって、活動できなくなるのが理想

──ワークショップの参加者は、どんな方が多いのですか?

HOUKO:保育園で行うこともあるので、最年少は3歳から小学生、若い方、年配の方まで幅広いですね。最近は手芸男子も多いので、カップルで参加される方もいらっしゃいます。小さい子は布を切ってペタペタ貼る工作みたいなものを、大人の方はコースター、ポーチ、ストラップ、一人用のレジャーシートなど、日常生活で使えるものをつくることが多いです。手縫いですがそんなに難しくないので、手芸というより工作の感覚で自由に作ってもらってますね。ワークショップを通して、誰にでもできることを知ってもらいたいです。あと、ワークショップに興味を持ってもらうためにも、「かわいい」「つくってみたい」と思ってもらえるプロダクトになるよう意識してつくっています。そこは、デザインの役割だと思うので。

──プロジェクトをされるとき、傘はどうやって集めるのでしょう?

HOUKO:基本的には、ワークショップをするお店や美術館などで、地域の方にご協力いただき不用になった傘を回収します。去年実施した府中市美術館での公開制作では、3ヶ月かけて「傘の家」をつくったんですが、そのときは傘を集めるところからみなさんに参加してもらい、300本近くも集まりました。それをみんなで分解し、水洗いして汚れを落とし、乾燥させて、材料にしたんです。期間中に何回も参加してくれた子がいたりして、とても印象深いプロジェクトになりました。

──もはや傘は、忘れ物の代名詞。手軽に手に入るがゆえに、使い捨てられることも多くなったように思います。

HOUKO:ひと雨ごとに都内だけで約500本もの傘が忘れられているそうです。この活動は、最終的には「捨てられている傘がないからできない」となるのが理想なんですが……残念ながら微力で、8年間続けていてもあんまりその状況が変わった印象はないですね。傘が壊れてしまった経験って、誰でもありますよね。そこで捨てる前に、自分でも生まれ変わらせられることを知ってもらえたらと思っています。そこまでいかなくても、こういう活動があって、傘を回収していることを思い出してもらえたら、捨てられる傘がちょっとでも減っていくかもしれない。CASA PROJECTを続けていくことで「つくる」楽しさを伝えながら、同時に「傘を大切に使おう」という意識に少しだけつながるといいなと思っています。

取材を振り返って

傘からつくったキュートなピアスを揺らし、取材現場に現れたHOUKOさん。部屋に保管している傘は色別に整理して並べ、「たまに見てはニヤッとしています」というエピソードからも、傘が大好きで、傘でものをつくることを心から楽しんでいることが伝わってきました。束になり、うち捨てられたさみしげな傘。それらにもう一度息を吹きかけ、色鮮やかさに再生してみせる「CASA PROJECT」。リサイクルありきではなく、ものづくりの楽しさから、愛着を持ってものを使う大切さをそっと教えてくれる。そんなところが、「CASA PROJECT」が静かな共感を呼ぶ一番の理由のように思いました。

CASA PROJECT PROFILE

傘という素材を活かしてショッピングバッグやポーチ、ハンガーなどをつくるプロジェクトとして2007年に発足。プロダクトの販売、全国各地でワークショップの開催やインスタレーションを通して「不用になった傘を新しく生まれ変わらせる」というコンセプトを広めている。プロダクトはスーベニアフロムトーキョー(東京都港区)、トーキョーバイクギャラリー(東京都台東区)での販売に加え、オーダーメイドも可能。コンセプトに共感し、一緒に活動するCASA-memberへの登録も随時受付中。
http://casaproject.com/