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プロフィール

2015.2.12 『地域活性プランニング』代表取締役 藤崎慎一
2013年に一大ブームを巻き起こしたドラマ「あまちゃん」(NHK)。作品がロケ地(撮影地)である岩手県久慈市にもたらした経済効果は約33億円にものぼるといわれ、舞台となった海岸や電車を一目見ようと「聖地巡礼」を楽しむ観光客が現在も訪れています。こうしたロケ誘致やご当地グルメによる地域活性プロデュースの先駆けとなったのが、『株式会社地域活性プランニング』です。日本唯一のロケ地情報誌「ロケーションジャパン」の発行、映像制作者向けのロケ地検索サイト「ロケなび!」運営など、さまざまな手法でまちおこしを手がけてきた『地域活性プランニング』代表取締役の藤崎慎一さんに、地域と人を動かす仕事術についてお話をうかがいました。

リクルート時代の経験をベースに、ロケ誘致の仕組みを構築

──会社のメイン事業が「地域活性」という会社はとても珍しいと思いますが、どういう経緯で設立されたのですか?

藤崎:私は新卒でリクルートに入社し、住宅情報事業部を経て、地域活性事業部に配属されました。やってみて気付いたのは、地域活性事業は自治体ごとに課題も解決策もさまざまで、すごく時間がかかる事業だということです。それで収支が合わず、結局5年で撤退しました。しかし、その後も地域や行政から、「藤崎さん、地域のために何かやってください」という声はいただいていたんです。とはいえ、NPOのような利益の出ない形だと長続きはできない。そこで、地道にコツコツと収益を確保しながらも、地域活性を実現する会社があってもいいのではと考えて、2003年に会社を立ち上げました。

──具体的に、どのような事業で地域活性をサポートされているのでしょうか。

藤崎:当社は大きく分けて4つの事業で構成されていて、その一つが先ほどお話したリクルート時代の業務を引き継いだ「地域活性のコンサルティング」です。そして二つ目が、映画やドラマのロケ地を紹介する雑誌「ロケーションジャパン」の発行。三つ目が、制作者にロケ地となる場所を有料で提供する「ロケーションサービス」です。日本でも2000年にロケ誘致の専門組織である「フィルムコミッション」が設立されましたが、撮影隊は逃走シーンのために倉庫街を探しているのに、地域は観光地ばかりを勧めるなど、ミスマッチが生じていました。それを解消したサービスとして、制作者の方々にとても喜んでもらっています。そして四つ目が、制作者向けのロケ地無料検索サイト「ロケなび!」です。これは現在放映されているドラマの90%以上が利用するサービスで、同サイトに掲載している施設のコンサルティングが当社のビジネスの根幹となっています。

──それまでの自治体のロケ誘致とは何が違ったのでしょう?

藤崎:従来は実際に撮影隊がくると、「撮影時間を守らない」「破損や紛失がある」「ごみを散らかしたまま帰る」という問題が生じることがありました。私たちは、こうしたトラブルを避けるため、事前に制作者から撮影時期や作品内容などを「問い合わせシート」に詳細に書いてもらい、場所の使用料金を明記し、地域や施設の規約を確認してもらった上で契約するようにしました。利用者のニーズを聞き、ルールを守ってもらい、丁寧に対応をする。こうした手法は、リクルート時代の住宅のマーケティングリサーチをベースにしたものです。そうしたビジネスの手法でもって、自治体だけでは抜け落ちていた部分を整理し、みんながWin-Winになれる仕組みを作っていきました。


「ロケなび!」のトップページ。ロケ地はもちろんロケ弁、打ち上げの場所も探すことができる(左)、『地域活性プランニング』本社もロケ地に。出版社、新聞社、中小企業オフィスといった設定で数々のロケが行われてきた。(右)

映画やドラマといったエンタメにはとてつもない力がある

──当初から「ロケ誘致」を事業の主軸に考えられていたのですか?

藤崎:魅力あるまちづくりをするためには、映画やドラマのロケ誘致は欠かせないと当初から考えていました。なかでも大きな転機になったのが、ある企業から「保有する大型住宅街をロケで使えないか」と相談を受けたことでした。その住宅街は工業地域にあって、環境面などを考慮される方が多かったのか、半分ほど売れ残っていたんです。そこで「ロケーションジャパン」で紹介したところ、『アットホーム・ダッド』『鬼嫁日記』『結婚できない男』(すべて関西テレビ/フジテレビ系)などのドラマで撮影に使われ、イメージアップにつながって残っていた住宅がすべて完売したんです。この実績ができてからは、他の地域でもロケ誘致の効果を説明しやすくなりました。

──ロケ誘致が経済効果を生むことが実証されたんですね。

藤崎:世界で最も有名な香水のひとつといえばシャネルの5番ですが、なぜ有名になったかといったら、映画女優であるマリリン・モンローの「Five drops of Chanel N°5.」という言葉があったからです。女性たちが気軽に韓国旅行へ出かけるようになったのも、『冬のソナタ』という1本のドラマがきっかけでもあります。このように映画やドラマには計り知れないほどの影響力があるんです。情報番組のようにただ紹介するだけでなく、そこにストーリーがあり、そのストーリーに憧れて人々が地域を訪れる。オンエア後でも、こうやって人を動かせるのはエンターテインメントならではのパワーだと思っています。

──藤崎さんはご当地グルメの仕掛け人としても知られています。

藤崎:地域活性を考えるなかで行き着いたのが、ロケ地とグルメの組み合わせでした。旅先で時間がないからと観光名所を一つ削ることはあっても、お昼ごはんは抜きませんよね。しかも、どうせだったら地元にしかないものを食べたいと思う。そこに経済効果が生まれます。私たちがお手伝いした静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」も、2006年の「B-1グランプリ」で優勝して一気に知名度が上がり、地域の活性化につながりました。全国にはまだまだ、美味しいのにその地域以外の方には知られていない食べ物があります。私たちはそうした特産品やご当地グルメを、たくさんの人に知ってもらう仕掛けづくりもしています。また2012年11月からは、厳選したご当地グルメだけを扱う「LJマルシェ」というECサイトも始めました。


「やりがいも大きく楽しみながら仕事をしています」 と語る「LJマルシェ」担当の木庭清美さん(左)、インタビューを受ける藤崎さん(右)

地域の住民が自立すること。それがまちおこしです

──地域には具体的にどのように働きかけていくのでしょう?

藤崎:地域活性の最終的な目標は、地域に経済効果を出して雇用を生むことです。うまく宣伝ができて、ロケ地になって人が来たら、特産品が売れて、雇用が生まれます。地域が自立して稼がないと、まちおこしが成功したとは言えません。そのために私たちは地域の人を集めて勉強会を開き、強みや課題を洗い出すことで、“誰が、いつまでに、何をするのか”などと具体的な計画を立てます。自分たちが当事者になって考え、参加して汗をかき、自信をつけてもらう。そうして地域活性のための人材を育成することも、私たちの仕事なのです。

──地域活性はどの街でもできることなのでしょうか?

藤崎:まちおこしって誰のためにするかといえば、子の代、孫の代のためです。自分たちが受け継いできたものを、下の世代にきちんと渡すためにやっています。地方の多くは、原風景のような風情を守り続けているし、その地にしかないものには可能性がある。奇をてらわず、そこを大事にすればいいのです。あとは、それを外の人たちにどうやって伝えるかです。それを私たちは第三者として客観的に見て、雇用を生めるように、そして楽しく続けていけるように、アドバイスしています。

──大手企業も撤退した地域活性事業で成功された秘訣はなんだと思われますか?

藤崎:私の性格としては自ら飛び込んでいく「Push型」ですが、この事業は、地域の方が主体的に動かないと成り立たないので「Pull型」を目指していて、依頼のあったものだけを手がけています。しかし、地道にやってきた経験は誰にも真似できない強みとなり、その成果がテレビや新聞で紹介されるようになると、官公庁や自治体、企業などから「相談にのってほしい」と依頼がくるようになりました。ときどき私は、どうして地域活性のような大きな命題に向かってしまったんだろうと思うときがあります。地域によって課題はさまざまで、試行錯誤の連続です。でもうれしいことに、全国から相談にきてくれます。そうして頼りにされるから、あんまり儲からなくてもやるしかないなと思うんですよね(笑)。

取材を振り返って

リクルート時代に培った経験を活かし、地域活性事業に新風を吹き込んだ藤崎さん。今では藤崎さんだけでなく、多くのスタッフが自治体や企業のアドバイザーとして活動しているそうです。スタッフの一人、「LJマルシェ」を担当する木庭清美さんは2年前に大手IT企業から転職。「生産者の方から、監督、俳優、社長、大臣まで、さまざまな方のお話を聞く機会があるのですが、それだけたくさんのことを勉強しないといけないので頭がパンクしそうになることもあります(笑)。でもその分、やりがいも大きく、楽しみながら仕事をしています」と話してくれました。藤崎さんの「人を主役にさせる」仕事術は、社内をはじめ日本全国の人々の心に火を点け、さまざまな場面で大きな力を生み出している。そのことが、耳なじみのある作品や地域の名前が出るたびに、実感として伝わってきました。

地域活性プランニング Profile

リクルートで地域活性事業を手がけていた藤崎慎一が代表となり、2003年4月に設立。ロケ誘致、ご当地グルメの発掘やPR、ロケ実績を活用したブランディングなどを通じて、さまざまな地域の活性化および人材育成をサポート。藤崎代表は2014年4月、内閣官房「ふるさとづくり有識者会議」の委員にも就任している。
http://www.chiikikassei.co.jp/